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第48話 Re:告白②

「何を……。」涼矢は無表情だった。「自分が、何を言ってるのか、わかってる?」 「あたりまえだ。」 「ふざけてるの?」 「本気で、真剣に、心から、言ってる。」  涼矢は和樹の体を軽く押した。「じゃあ、まず、一歩下がって。」言われるがままに和樹は少し後退した。「少し、時間をください。」涼矢が棒読み口調で言った。 「なんでだよ。俺のこと好きなんだろ。考える余地ないだろ?」 「俺じゃない。和樹に考える時間が必要だと思う。」 「そんなの。」和樹が前に出ようとするのを、涼矢は手で制した。 「三年だ。俺は、三年考えてた。和樹にも、もっとちゃんと考えてほしい。」 「三年考えろって言うの?」 「まさか。……そうだな。卒業式の日に、返事する。三日後だな。それまでに、おまえの気が変わっても、俺は恨んだりしない。なかったことにしようって言われれば、そうする。もともと、そのつもりだったんだ。」 「頭を冷やせば、俺の気が変わると思ってるのか? なんで? 俺が好きじゃないの? そっちこそ気が変わったの? 俺に幻滅した?」 「幻滅なんかしてない。」 「じゃあ、嬉しくないの? つきあおうって言ってるんだよ。」 「嬉しいよ。」無表情のはずの涼矢の右目から、一筋の涙がこぼれた。「嬉しいに決まってる。夢じゃないかと思ってるよ。でも。」左目からも涙があふれ、それを涼矢は手で拭った。「怖いんだよ。俺の三年が、一日で変わっちゃうことが、怖い。だから。」 「……わかった。三日間、ちゃんと考える。それでもやっぱり今と同じ気持ちだって言えば、涼矢は、俺を信じられるんだな?」  涼矢は返事をしなかった。和樹はファイルを涼矢に返した。「まだ、受け取れない。つきあうって言ってくれたら、もらう。東京で淋しくなった時、見るから。」涼矢はそれを受け取り、棚には戻さず、机の上に無造作にポンと置いた。  和樹のスマホがメッセージの着信を知らせた。母親からだ。もう外は暗い。おそらく今どこにいるのか、夕食はどうするのか等々を尋ねているのだろう。  涼矢も窓の外の暗さを見て察したようだ。「自転車、乗ってないのがあるから、使う?」と言った。和樹は、今日は電車とバスで移動していたことを思い出した。 「いや、歩くよ。てか、走って帰るかな。最近、ランやってないし。」 「そう。」素っ気なく涼矢が答えた。無表情で、素っ気ない。普段通りの涼矢に戻ったようだった。二人で階下に降りる。スニーカーの靴ひもを結び直す和樹を無言で見つめる涼矢。 「俺、ちゃんと考えるから。」と和樹はもう一度言った。 「うん。」 「涼矢も、考えて。前向きに。」 「……うん。」  和樹は涼矢の肩を抱き、頬に軽いキスをして、涼矢の家を後にした。

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