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第50話 Re:告白④
和樹が登校すると、柳瀬が話しかけてきた。「よ、久しぶり。東京どうだった?」
「疲れた。人込みがすごくて。」
「涼矢、昨日も今日も来てないよ。あのあと、連絡ついた? あいつ、土曜もドタキャンつうか、無断欠席でさ。」
「ああ、うん。大丈夫。」
「おまえには連絡来たんだ? 土曜、あいつ目当ての女子も来てたからさ、電話したけど出ねえし。メールも返事ねえし。既読つかねえし。」
涼矢目当ての女子、というくだりにひっかかるが、あからさまに反応するわけにはいかない。「俺も連絡してないよ。こっちの用件は解決済みだから、もう、いいんだ。」
「なんだ、そっか。」それなら用はないと言わんばかりに、柳瀬は背を向けて自分の席に戻ろうとして、またすぐ、戻ってきた。「そういや、川島さん、来てたぜ。」
「あっそ。」俺が行かないなら行くのよそうかな、なんて言っていた癖に。
「年明けから柴とつきあってたんだってな? でも、それももう危ないらしくてさ、柴が来てないのをいいことに、次の彼氏募集中とか言っちゃってんの。でも、本当はおまえに未練たっぷりな感じだったよ。ヨリ戻すなら、チャンスだぞ。」
「関係ない。」これは本心だった。自分でもびっくりするぐらい、綾乃のことなどどうでもよかった。
「もったいない、あんな美人。東京にもそうそういないんじゃないの。」
「そう思うなら、おまえがつきあえよ。」
「俺なんか眼中にないに決まってるだろ。これだからモテる奴はいやだよなあ。」無遠慮にバンバンと肩を叩かれて不愉快だったが、ここで怒っても男を下げる気がして、我慢した。
「試しにつきあってみれば、俺や柴なんかより、柳瀬のほうがいい男だってわかるのにな。男を見る目がないんだ、彼女。」
「うまいこと言うね、都倉ちゃん。そりゃモテるわ。俺まで惚れそうだわ。」柳瀬にまで惚れられても困る。俺の好みは、もっと寡黙なタイプだ。寡黙で、切れ長の目をしていて、無愛想だけど、すぐ赤面する。俺と同じぐらい泳ぎがうまくて、CGを描くのが特技で、俺と音楽と漫画の好みが似ていて、美味い飯が一緒に食える。そういう奴だ。
そろそろ柳瀬の相手をするのが面倒くさくなった時に、頃合いよく先生が入ってきた。
ああ、涼矢に会いたいな。と、和樹は思った。次に会えるのは、明後日の卒業式の予行。その翌日が運命の卒業式の日。涼矢、俺は学年一、いや学校一の美人よりも、おまえを選んだんだ。すぐに遠距離になることも承知で、それでもおまえとつながっていたいと思うんだ。
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