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第62話 ふたり②

「なあ、涼矢。」和樹は涼矢の耳に囁く。「挿れたい。だめ? どうしても?」その声は熱い吐息となって、涼矢を刺激した。「優しく、するから。」和樹がそう言うと、涼矢は和樹の肩にもたれるように倒れこんできた。 「俺が拒否できないの、わかってるんだろ。」  和樹は涼矢を抱きとめる姿勢から、ちょっとした技でもかけるようにして組み伏せた。四つん這いの姿勢を取らされて、涼矢は羞恥で顔を赤くしたが、背後の和樹からはそれは見えなかった。  和樹はベビーオイルを自分の手と涼矢のそこに垂らし、指を少しずつ挿入した。「あっ。うんっ。」和樹の指の動きに合わせて、涼矢の口から洩れる声。和樹は指を回すように深めながらも、もう片方の手では涼矢の前のほうを弄った。「や、だめ……。」 「気持ち良くない? やめていいの?」 「……いや…だ……。」 「どっちがいやなの? やめてほしいの? ほしくないの?」  涼矢は何も言えなかった。顔だけをなんとか背後の和樹に向けて、恨みがましい目で睨んだものの、その瞬間、突きあげてきた異物感に思わず「ひあっ」と声が出てしまった。 「やっぱ可愛い。」和樹は手を止めずに涼矢の腰にキスをした。「好きだよ。」 「…かず……ひど……。」喘ぐ合間に弱々しく文句を言うことしかできない涼矢だった。  ひとしきり涼矢をほぐして、大丈夫そうなのを見届けると、和樹は挿入する指を一本増やした。涼矢はいつの間にか枕をたぐりよせて、そこに顔を埋めていた。そうやって痛みに耐えているのか。和樹はなるべくゆっくりと優しくことを進めた。だが、やがて三本目の指が入ってくると、枕につっぷしていることもできなくなった様子で、涼矢は体をそりかえして「ああっ」と声を上げた。そして、慌てて自分の腕に歯を立てた。 「噛むなよ。怪我するよ。……辛い? これ以上は無理?」  涼矢は涙目になって首を横に振った。「大丈夫。」 「痛い?」 「痛くない。平気。ただ……。」 「ただ?」 「声、我慢できない…から……。」消え入りそうな声で言う。  和樹はまさか涼矢が声を気にしていたとは気づかず、呆気にとられたものの、それと同時に愛しさがこみあげてきた。「なんで我慢? 聞かせてよ。」涼矢の中を指でクイッと混ぜる。 「あっ…やっ……。」 「痛くない?」 「……うん……あっ…あっ…。」涼矢の声が艶っぽく響いた。 「じゃあさ……挿れて、いい?」  涼矢は一瞬ためらった後、小さくうなずいた。和樹は、自分のものにもオイルを塗ると、涼矢のそこにゆっくりと挿入していった。涼矢の喘ぎが更に激しくなった。「大丈夫?」和樹は涼矢を気遣う。涼矢は返事どころではないという風情で息を荒くする。再び「痛くない?」と尋ねると、涼矢はやっとのことで言った。「大、丈夫……。」  涼矢の両手が必死にシーツをつかんでいるのが見えた。和樹は、今まで経験してきたのとは似て非なる快感に急速に飲みこまれていった。涼矢を気遣いつつも、腰の動きを止められない。涼矢が喘ぐたびに熱い肉壁にしめつけられる。「これ、ちょっとヤバい……やべ、イク。」和樹は射精した。

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