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第65話 ずっと。②
そんな涼矢の唇を、和樹の指がなぞった。涼矢の唇が薄く開いた。和樹は涼矢の口の中に指を差し入れた。涼矢は嫌がるでもなく、その人差し指を舐めた。和樹は中指を追加した。二本の指で涼矢の口を閉じさせないようにするので、涼矢の口の端からは唾液が垂れてきた。「もう一回、言って。」
「らいすき。」涼矢の舌足らずな声。
和樹は指を抜き取りキスをした。「涼矢。おまえ、エロすぎ。」
「和樹がそんなことばかり考えてるからだ。」
「おまえだってそうだろ。」
「じゃ、今、俺は何考えていると思う?」
「和樹ってキスが上手いな、とか。」
「馬鹿。」涼矢は起き上がった。「そろそろ腹減ったな、だよ。」
「色気ねえな。」和樹は笑った。
涼矢はそれには返事せず、服を着始める。制服ではなく、部屋着だ。「和樹、ジャージでも貸そうか?」
「こんな日に着替えて帰ったら、ママに怪しまれちゃう。」ふざけた口調で言う和樹。
「そしたら、なんて答える?」
「制服は、カレシの家で脱いできたんだよ、ママ!」今度はわざとらしい裏声で言う。
涼矢が着替え終わっても、和樹は全裸のままベッドに横たわっていた。涼矢はパソコン机の前の椅子に座り、それをぼんやりと眺めている。「なんか変な感じ。」
「何が?」
「俺のベッドで、俺以外の男が全裸で寝てる。」
「俺の裸なんて見飽きるほど見てるだろ。」
「そうだけど。」
「ムラムラする?」
「しねえよ、馬鹿。」
「賢者タイムか。」
「おまえと違って四六時中欲情してるんじゃないんだよ。」
「へえ。枯れたオッサンみたいなこと言うんだな。」和樹がニヤニヤしながら言った。涼矢は椅子から立ち上がり、ベッドの端に座った。ベッドが一瞬ボワンと弾んだ。
「嘘だよ。」和樹の鎖骨に触れる。「ムラムラしてる。でも、我慢してる。」
「我満しなくていいのに。」
「止まらなくなるから。」和樹の耳たぶをつまむ。
「うわ、またエロ発動。」
「うん。俺、和樹が思ってるより、やらしいよ。」
「クールなふりして、むっつりなんだ。」
「キスしてもいい?」唐突に涼矢が言った。
「え。いいよ。」
涼矢は和樹に口づけ、ためらいがちに舌を伸ばした。和樹はそれに応えて舌先をからめていった。キスを終えても、何か言いたげな目をして、涼矢は和樹の顔を見つめていた。
和樹は言いづらそうに言った。「引っ越しは、28日。」
「わかった。」
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