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愛しさのかたち2
「ねぇ愛菜ちゃん、小林さんに愛菜ちゃんがここに来たことを電話してもいいかな? 会社の帰りに、何かお菓子でも買って帰って来てもらうために」
竜馬の言葉を聞いた途端に、暗かった愛菜の顔が一気に明るいものへと変化した。
「いいよ! 私、アイスが食べたいな」
「アイスだね、伝えてあげる」
親指と人差し指でOKマークを作って了承し、作業着のポケットに入れていたスマホを取り出して素早くコールする。
「もしもし、何かあったのか?」
いつもなら仕事に没頭してすぐに繋がることのないラインが、珍しく3コールで反応してくれた小林に心の中で感謝した。
「おおありですよ。小林さん家の前に、愛菜ちゃんがいました」
「なんだって!?」
「詳しいことはアプリのメッセで書きます。急いで仕事を終わらせて、帰りにアイスを買ってきてください。愛菜ちゃんが食べたいそうです」
「分かった。マッハで終わらせて、愛菜が好きなバニラアイス買って帰る!」
気合いの入った小林の声に吹き出しかけた途端に、ぷつっと通話が切られた。耳から離したスマホを操作してアプリを起動し、メッセージを打つ。
『愛菜ちゃんが小林さんの家に来たことを、お母さんに伝えていないそうです。あえて何があったかは聞いてません。とりあえず、晩ご飯を食べさせようと思います』
テキパキ打ち終えて送信した。すぐに既読はついたが、小林からの返事はない。きっと今頃必死こいて、仕事を片付けていることが容易に想像ついた。
「さーて、愛菜ちゃん。お腹が空いてる頃だと思うんだけど、嫌いなものはあるかな?」
跪いて愛菜の自然に合わせるなり、微笑みながら訊ねてみた。
「あのね、にんじんとピーマンが苦手なの」
バツが悪そうに答える姿に、竜馬は小さな頭を撫でてあげた。
「だったら愛菜ちゃんが食べることができるように、美味しいものを作ってあげる。お手伝いしてくれるかな?」
「うん! いいよ」
こうして竜馬と愛菜は仲良くキッチンに並んで立ち、楽しく夕飯を作ったのだった。
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