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愛しさのかたち3
***
「ただいまっ!!」
勢いよく開く扉を見て、竜馬は愛菜と一緒に笑い声をあげた。台所に仲良く並んで、洗い物をしている最中だった。
「パパ、おかえりなさい。愛菜ね、苦手だったお野菜が食べ――」
台所から振り向いて話しかけた愛菜の体を小林はしゃがみ込んで、何も言わずにぎゅっと抱きしめる。
「パパ? 愛菜の両手濡れてるから触れないよ?」
「ひとりでここまで来て、怖いことはなかったのか?」
「平気だよ。だって何回もパパと一緒に来てるもん」
「愛菜ちゃん、これで手を拭いたらいいよ」
万歳したまま抱きしめられている愛菜を見かねて、竜馬がタオルを渡した。
「済まなかったな、竜馬。愛菜の面倒を見てくれて」
「いえ……。びっくりはしましたけど愛菜ちゃんと話ができて、結構楽しかったです。手に持ってるのアイスですよね? 一旦冷凍庫に入れておきますね」
愛菜の来訪に動揺しているであろう小林を慮り、手首にぶら下がったままでいたアイスの入ったビニール袋を手に取った。
「竜馬、本当にいろいろ悪かった」
「いいんですって。それよりもお腹が空いているでしょう。愛菜ちゃん、パパのオムライスにケチャップをかけてくれるかな」
小林に抱きしめられた状態の愛菜の頭を撫でながら、指示を出してみた。
「うんっ。美味しくなるように、にっこりマーク描いてみるんだ!」
愛菜は両腕を使って小林の体から脱出し、嬉々として竜馬の左手を掴んだ。仲のいいふたりの様子を目の当たりにして、小林は呟かずにはいられなかった。
「なんだろ、いろいろ複雑な気分」
その呟きは竜馬の耳には届かず、台所で交わされるにぎやかな声にかき消されてしまったのだった。
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