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愛しさのかたち4
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三人でアイスを食べたまでは、雰囲気は大変良かったと記憶している。そして今現在、正座している竜馬を挟んで展開されている様子に、顔を引きつらせるしかなかった。まさに、お手上げ状態だったのである。
というか両腕をふたりに確保されている時点で、動くことすらできなかった。
「愛菜、絶対に帰らない! 竜馬のそばにいるもん!」
むくれ顔をそのままに愛菜は言い放ち、縋りつくように竜馬の左腕をぎゅっと抱きしめる。
「そんなワガママ、パパが許すはずがないだろう!」
父親の威厳を振りかざしつつ、恋人のように竜馬の右腕に自分の腕を絡ませた小林。
「あ、あのぅ……」
「パパ、ズルいよ。竜馬をひとりじめしようとしてるでしょ!」
「そんなことはない。愛菜がママのところに帰ったら、竜馬も自分の家に帰るんだから」
自分を中心に引っ張り合いをする親子を前に、竜馬は対処できずにいた。
どちらかの肩を持てば、間違いなく片方の機嫌が悪くなるのが容易に想像できるだけに、口を挟むことすらできない。
「竜馬、おうちに帰っちゃうの?」
「ぅ、うん。明日も仕事があるからね。帰るよ……」
言いながら右側にいる小林の顔を見たら、もの言いたげなまなざしとかち合った。
(これは俺の作った料理を食べたあと、俺の躰も食べようと思ったのにっていうのが、なんとなーく滲み出てる視線だな。目は口程に物を言うから――)
「愛菜、ママと喧嘩したことは分かったけど、他にも何かあるんじゃないのか?」
みんなでアイスを食べながら、今回の来訪について小林と一緒に上手いこと聞き出していたので、理由は分かっていた。
竜馬自身も母親と喧嘩したとき、なかなか家に帰りづらかった過去があったので、愛菜の気持ちを理解していただけに、他の理由があるなんて思いつきもしなかった。
父親として有能な姿の小林を垣間見ることができて、竜馬の頬が自然と緩んだ。
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