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愛しさのかたち5

「りっ理由なんて、そんなものないもん」  ぷいっと顔を背けてむくれる愛菜を見て、竜馬はふとしたことが閃いた。 「愛菜ちゃん、もしかして隠してることは、パパやママに関係のあることじゃない?」  竜馬が指摘した途端に、ちょっとだけ愛菜の表情が変わった。困惑と悲しみの両方が見え隠れする感情を目の当たりにしたからこそ、小さな右手を両手で包み込んであげる。 「これは俺の話なんだけど、さっき夕飯を作りながら、いろんなお話をしたよね。俺の家は愛菜ちゃんと同じく、お母さんと二人暮らしをしてるって」 「うん……」  愛菜が共感しやすいであろう、自分の話を持ち出してみた。 「俺の家には、もともとお父さんがいなかったっていうのもあるけど、愛菜ちゃんと同じくらいのときは、季節ごとのイベントがすっごく嫌だった。周りの友達はみんなお父さんがいて、一緒に楽しくイベントを過ごしたことを、聞くのがつらかったんだ」  華奢な右手の甲を指先で撫でながら、遠い昔のことを思い出しつつ語りかけると、愛菜の大きな瞳がちょっとだけ潤んだように見えた。 「小さな竜馬、かわいそう。寂しかったでしょ?」 「寂しいよりも羨ましかったな。そんなモヤモヤした気持ちのまま、家に帰っていたんだけど、母さんがいるから変なことで落ち込んでいられなくてね。平気なふりして、学校であったことを面白おかしく喋ってたよ。愛菜ちゃんはどうなのかな?」  優しく問いかけた竜馬の視線を避けるように、顔を俯かせる。愛菜のまなざしは、擦られている右手を捉えていた。 「愛菜、竜馬がおまえに聞いてるんだ。きちんと答えなさい」 「…………」 「小林さん、無理強いは駄目ですって。言いたいことが言えなくなる」  焦れた小林に視線を飛ばしつつ、慌てて注意をした。 「だけど――」  母親に黙って、父親のもとを訪れた愛菜の気持ちを考えながら、自分の思いをまとめてみる。 「父親として、子どもの気持ちを知りたいのは分かります。だけどデリケートな問題だからこそ、そこのところは慎重にいかないと」  小林から目の前に視線を移すと、何か言いたげな表情の愛菜と視線がぶつかった。

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