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しあわせのかたちを手に入れるまで3

 アヤシげにうごめく小林の手に翻弄され、次第に息が乱れていく。  わざわざ路地を覗き込まない限り、自分がされている行為を見られることはないと分かっているのに、やっぱり気になってしまうのは、竜馬の頭の片隅に羞恥心が残っているから。  でもその一方で、このスリルを楽しむような気持ちがどこかにあって、小林の手の動きに合わせて腰を動かしてしまった。 「やっ……んぅっ」 「お前を乱すことができるのは、俺だけなんだぞ」  耳元で甘く囁かれる声にぞわっとし、快感に身を震わせながら竜馬はやっと頷いた。 「俺を好きって言えよ。俺だけだって」 「この手を退け、ないと、ぁあっ……言えませんって」 「ズボン越しでも分かる。熱を持ってこんなに大きくなっているのに、止めていいのか?」  竜馬のお願いを聞いて手を退けたと見せかけ、小林のいきり勃った下半身をぎゅっと押し当てられる。 「ぅあっ……ぁっあっあ!」  下から上に動かされるせいで、否が応にも感じてしまった。喘ぎ声がどうにも抑えられなくて、竜馬の口から自然と溢れ出る。 「も……ヤバぃ、です、よっ」 「数ヶ月で、随分と感度が上がったよな。ここだけじゃなく、こっちも」  小林の空いてる両手が双丘へと伸ばされ、感じるように揉みしだく。途端に竜馬の奥がきゅんと締まって挿ってくるはずの小林の分身を、今か今かと待ちかねるように疼きはじめた。 「なぁ、そろそろ機嫌直してくれよ? 今度はちゃんと空気を読んで、指輪を渡してやるから」 「更にぃ、機嫌が悪くなって……ること、くうっ……気がついてないでしょ」 「何でだよ。どうして」  愕然として、息を切らす竜馬を見下した小林。自分だけが散々感じさせられた挙句に、乱れている現状に満足していないとは考えつかない、まったく空気の読めない恋人を、不機嫌満載な表情で眺める。 「こんな場所で、はじめなくてもいいでしょ……」 「だってお前の機嫌を直したくて、つい」  ご主人様に叱られてしょぼんとした犬のように、小林の表情が一気に暗くなった。 「竜馬に指輪を渡して、俺だけのものだっていう目に見える印をつけてもらえると思ったのに、サイズは間違えちまうし、たまにはこういうところでイチャイチャしたら、もっと好きになってくれるかと思ってだな」 「何を言い出すかと思ったら。俺は小林さんが好きなのに」 「竜馬、口だけなんだよ。お前の気持ちが全然伝わってこないんだ」  どこか切なさを含んだ小林の声に、竜馬の胸が締めつけられるように痛む。それがどうにもやり切れなくて、瞼を伏せて小林からの視線を外した。 「気持ちは見えないものだからこそ、必死に感じようと手を伸ばす。それなのにお前はどこか一線を引くから、すり抜けちまうんだぞ」 「見えないものの話をされても、さっぱり――」 「逃げるな!」  小林は言うなり竜馬の顔を両手で包み込み、自分に向けさせた。渋々瞼を上げて目の前を見つめる。  いつも浮かべている微笑みを消した、小林の真剣な眼差しと目が合った。

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