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愛しさのかたち8
「愛菜ちゃんにとっては、小さなことじゃないです。父親としてそこのところを、しっかり把握しなきゃ駄目ですよ」
竜馬が目を吊り上げて小林を叱ると、愛菜は竜馬の袖口を掴んで強く引っ張った。その衝撃に、視線を落として目の前にある顔をしっかり見つめる。
「愛菜ちゃん?」
「竜馬、パパは愛菜と一緒にいないから、わからないことがたくさんあると思う。だから怒らないで」
小林に似た愛菜のまなざしを注がれるだけで、竜馬はなんともいえない気持ちになった。
「わかった。もう怒らないから安心して」
「パパも愛菜のことをもっとよく知りたいから、今度来たときにいろいろ教えてくれ」
竜馬とともに自分の気持ちを素直に告げた小林を、愛菜は満面の笑みを浮かべて、大きく頷いた。
「パパに逢いに来るときは、ちゃんと連絡してからにするね。だから竜馬にも、愛菜が来ること伝えてほしいな」
「なんで竜馬に伝えななきゃいけないんだ?」
あからさまに憮然とした表情の小林に、竜馬は吹き出しそうになった。
「竜馬と一緒にお料理がしたいから。それをパパに食べてもらいたいの」
「愛菜ちゃん、次はなにを作ってみたい?」
「パパの大好きなハンバーグ!」
「ということですので、愛菜ちゃんが来る日がわかったら連絡お願いします」
おどけながら頭を下げる竜馬を見て、愛菜も同じことをした。リンクするふたりの様子に小林は困惑の表情を滲ませる。愛菜の父親であり竜馬の恋人である自分がこれから先、ふたりに翻弄されることがわかりすぎるゆえに、複雑な心境に陥ったのだった。
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