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第3話
学校に着けば、いつも通りの光景が目に入ってきた。
「アキさーん!こっち向いてー!」
「いいなぁー、佳奈は。私も誰かの『パートナー』になりたーい』
「私、今日こそユキ様に『パートナー』になってってお願いする……!」
朝と放課後は唯一、吸血鬼クラスと人間クラスが交わる時間。すなわち、この学校独自の制度である『パートナー』を探すにはうってつけの時間だった。
『パートナー』とは、無闇な吸血行為を無くすために作られた制度。入学時に貰う、人間なら青、吸血鬼なら赤の石がはめられた指輪を交換することによってそれは成立する。
『パートナー』を持つ吸血鬼は『パートナー』からしか吸血をせず、既に他の誰かと『パートナー』となっている人間の血を吸うこともない。
つまりは1対1の関係を築くことで、狙われやすい人間が複数の吸血鬼から狙われる可能性を減らそうというわけだ。
もちろん『パートナー』となる際には両者の合意であることが絶対の条件であり、もし嫌がっている相手を無理矢理『パートナー』にさせた場合には吸血鬼側に重い罰が課せられる。
吸血鬼の縄張り意識と強い独占欲を利用した、実に合理的な制度だった。
それに吸血鬼は容姿端麗な者が多く、血を吸われるくらいならと『パートナー』になりたいと願う人間は後を絶たない。両者の利害は一致しているため、既に3分の2以上もの人が『パートナー』契約を済ませていた。
その中でも特に人気があるのが、僕の弟その人である相楽 優。
ユウはとてもモテるのに『パートナー』を未だに持っていないということで有名だった。
顔はもちろん美しく、その上誰に対しても優しい彼。
異性ばかりか同性からの人気も得ており、加えて『サガラ』の名は吸血鬼の羨望さえも独り占めにした。
『サガラ』とは、吸血鬼の中では知らない者はない、強大な力を持つ純血種の家系の1つだ。だからこそ父も理事長なんてものができている。
そんな事実を思い出せば、少しだけ劣等感が心を覆った。僕は首を左右に振ることでその暗い霧を吹き飛ばす。
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