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第4話

授業が始まってしまえば、別段不思議なことは起こらない。比較的真面目な生徒の多いこの学園では、退屈すぎるほどに穏やかな時間が流れていく。 僕はそんな静けささえをも愛しく感じていた。何より、ここにいる間は彼の視線から解放されるからだ。 しかし、そんな僕の気持ちなどお構い無しに、誰にでも等しく放課後は訪れる。 それを告げる鐘が鳴り響けば、クラスの大半の人たちが急いで教室を出ていった。 普段ならパタパタと足音が響くのだが、今日は少し様子が違う。 「優様!?どうしてここに……?」 「えっ、ほんとだ!こんな近くで見たの初めてー!」 何やら廊下が騒がしなと思っていれば、クラスメイトから大きな声で名前を呼ばれた。 「おーい、棚橋ー!」 声の聞こえた方向を見れば、何人かが扉付近で手招きをしている。僕に用事なんて珍しいこともあるものだと思いながら近付いて、彼の横に立つ人物に驚いた。 どうして彼がここに。 なんで来たんだと言いかけて、口を噤む。 周りの人は僕らの関係を知らない。僕なんかが学園の象徴とも言える彼に口答えなんて出来るはずがなかった。 学校で彼が僕に接触してくる理由が分からない。 彼自身も僕の体質を隠すために『パートナー』契約はおろか、学校では関わりを絶っていたのに。 「棚橋良さん、ですよね?少し一緒に来ていただけませんか?」 あくまでも他人行儀で接してきた彼に、安心して小さく息を吐く。 しかし、僕が答えるより先に僕の手首をガッチリと捕まえる彼は、僕の知るユウそのものだった。 そのままズンズンと歩いて行く彼。何か怒っているようにも見えて逃げ出したい衝動に駆られるが、掴まれた手首は振りほどけそうにない。 仕方なく、転ばない程度に離れながら彼の後についていった。

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