11 / 13
第11話
「いやっ、嫌だ、来ないで」
怖い。離れたい。
彼だけに反応する身体を、認めたくない。
「良にぃ……」
「来るなって言ってるだろ!!」
怖いんだ。
彼に触れられるだけで熱くなる身体が。
彼の声だけで早くなる心臓が。
男の言った通り、全て彼のためだけに存在してる証拠に思えて。
「良にぃ、落ち着いて」
彼の腕が、暴れる僕の身体をそっと包む。
嫌なはずなのに、離れたいはずなのに、その香りに絡め取られて動けない。
そんな自分の無意識の行動が怖くて。
「怖い……」
思わず、彼の胸に向かって声が零れていた。
「ごめんね、確かめたかったんだ。良にぃは本当に僕のなのかって」
彼が優しく、抱き締める力を強くして言うものだから。
「っ、それが怖いんだよ……!」
僕は許された気がして本音をぶつけた。
「どうして?」
それは威圧感の無い、柔らかな口調。今までどことなく感じていた不安が、どんどん口から溢れ出した。
「嫌なんだ……っ。生き方を決められてるみたいで。ユウにしか反応しない、この身体が嫌だ……!」
「僕は、良にぃが好きだよ」
「嘘だ……!ユウだって、僕の体質に惑わされてるだけで……っ」
「嘘じゃない。確かに僕も良にぃにしか興奮しないけれど、それは決められた運命なんかじゃなくて、僕の愛の現れだと思ってる」
「うそ、だ……」
「嘘じゃない。ねぇ良にぃ、良にぃは体質に縛られてるんじゃなくて、自分で自分を縛ってるんだよ」
そう言って彼が離れていく。初めて彼と、真っ直ぐに目を合わせた気がした。
「僕は狡いから、こうして良にぃの体質を利用してきた。でもずっと欲しかったのは、良にぃの体質じゃなくて良にぃ自身だ。
……だからお願い、僕を見て」
それは優らしくない言葉。支配者である優には似合わない、縋るような、告白めいた言葉。
でもそれはしっかりと、僕の目を覚ました。
「僕、自身…….?」
彼は頷いて、ゆっくりと僕の唇に彼のそれを重ね合わせる。今までで一番優しいキスは、簡単に僕の心まで入り込んできた。
ともだちにシェアしよう!