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第11話
そんな日常を繰り返していたある日の放課後、義弟が珍しく用があると言って、俺たちから離れた日があった。
大方、誰かに呼び出されたのだろう。
その呼び出しの目的が悪意であれ好意であれ、あまりよろしくないのは確かなので、出来る限り義弟から離れていたくはない。
だが、そんな思いとは裏腹に、義弟が居ないと理解すると、俺はすぐに副会長を筆頭にした義弟の取り巻きメンバーに呼び出された。
メンバーの中には珍しく、不良くんが居ない。
思えばここ最近居なかったので、おそらくどこかでサボっているのだろう。
そして今俺が居るのは人気のない旧校舎の3階にある一室。
ここには滅多に人が寄り付かず、呼び出すには最適だ。
というより、一般生徒はこの旧校舎の鍵を持っていないので不可能なのだ。
「ちょっとバ会計!聞いてるんですか!」
「「バ会計のクセに僕らを無視をするなんて良い度胸だねー!」」
「無視…す……る…な。」
生徒会メンバーに加えて、1人、義弟のクラスメイトが俺に詰め寄る。
「そうですよ会計様。俺らはただ、あんたみたいな人が太陽に近づくなって言ってるだけなんですから、さっさとうなずいてくださいよ。」
まったくうるさい後輩だ。
生徒会メンバーだけでもうるさいのに、余計な奴まで加わってめんどくささが倍増する。
桐谷翔琉は、義弟と同じクラスの爽やか優等生くんだ。
爽やかだと思ってたら腹黒だった。
真っ黒だった。
むしろ爽やかどこ行った。
原型無いじゃないか今。
「そうは言ってもねぇ~、桐谷翔琉クン。君には言われる筋合いはないかなぁ~?それにみんなもさぁ~、」
窓際まで追い詰められながら、言葉を続けようとしたその時、ふと視界の隅に見覚えのある髪型が写った気がした。
目の前に居るやつらを刺激しないように、さりげなく、俺の居る窓際の真下、窓際の旧校舎の裏庭を見える位置に移動する。
居た!やはり義弟だ。
視線を外さないように気を付けながら、言葉を紡ぐ。
「というか~、俺にかまってていいの~?太陽誰かに呼び出されたんでしょ~?」
「あっ、そっそうでした!太陽、太陽は!」
「「きっと性悪の親衛隊にでも呼び出されたんだよー!」」
「大……変………!」
「こんなことしてる場合じゃなかった!先輩方早く退いてください。俺今から太陽助けに行くんで。」
「なっ!抜け駆けは許しませんよ!」
「焦ってるとこ悪いケド~、太陽の居場所分かってるの~?」
「そういう会計様は分かってるんですか。」
「まぁね~」
「「えー、ホントにー?」」
「うん、ホラそこ~。」
指差した先には、銀色に光を反射するものを向けられた義弟の姿があった。
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