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第2話
この日、俺はまたピエロになる決心をした。
記憶が戻ったあの日から、数年が経ち、俺は高校2年生となっていた。
学園では、柏陽家との繋がりをバレないようにするためにも、遠い分家の名字を名乗っていた。
そして、幼い頃の真面目な少年の姿はなく、そこには、頭の悪そうなチャラチャラした人物が出来上がっていた。
これが、今の俺だ。
ピエロとなったあの日から、柏陽家に使われ続けることに我慢がならなかった。
このままでは、俺は永遠に柏陽家の奴隷だ。
それを脱却するためには、前世と同じく柏陽家と縁を切る必要があった。
優秀であれば、将来に困ることはないので、勉学には手を抜かなかった。
幸い容姿にも恵まれ、俺はこの学園内に確固たる地位を確立していった。
女性と縁のないこの学園の欲の向かう先は同性だ。
容姿の良い生徒は、親衛隊なんてものまで作られ、崇められる。
気がつけば、高等部で生徒会会計を任されるほどにまで大きくなっていった。
だが、優秀であればあるほど、地位を築くほど、柏陽家における俺の利用価値は高くなっていく。
本当は、生徒会役員となることは、俺にとってはデメリットしかない。
だが、昔と同じく、俺にはyesと答えるしか選択肢は残されていなかったのだ。
それならば俺は、素行を悪くすることに全力を注いだ。
少しずつ、少しずつ変化を加えていき、今の俺を定着させた。
容姿端麗、学業優秀。
だが、役員の仕事はサボってばかりで、下半身ゆるゆるのチャラチャラした会計様。
そんな像を作り上げた。
キャラ作りをするのは簡単だった。
仕事は最低限しかせず、あとは部屋に籠りっぱなし。
幸い生徒会役員は一人部屋なので、文句を言う同室者も存在しない。
この容姿を利用して、甘い言葉を囁けば、簡単に抱いてと堕ちてくる相手を抱いて過ごした。
初めのうちは、誘いに乗るがままに抱いてきたが、キャラも定着したことだし、だんだんと億劫になり、断るようになった。
『ごめんね~。今日はさ、もう決まってるんだ。』
また今度ね。
耳元で艶っぽく囁けば、それだけで顔を真っ赤にさせて動かなくなる。
そんな少年たちの頬に嫌悪感をこらえてキスをし、その場を離れる。
すると、次の日からは同じ少年は抱いてと口にしなくなるのだ。
中等部までの役員は、昔から変わらないメンバーだったようだ。
本来なら、今の俺が居るこの場所には、別の人間が入るはずだった。
会長は、俺様唯我独尊であり、学園1の色男 洸劉院 雅也
副会長は、常にニコニコしているが、腹の底ではなに考えてるのか分かったもんじゃない、線の細い美人 蒼燕 奏
書記は、無口な和風の男、周藤 内匠
庶務は、天真爛漫を装うかわいらしい双子の 藤堂 翔馬と天馬
どの家も、世界的に知られる大企業であり、かなりの金持ちだ。
そして、俺。会計の下半身ゆるゆるの馬鹿なチャラ男 白馬 亮
中等部までの会計は、桐生 真琴 という、可愛らしい子だったはずだ。
以前まではお姫様のように大事にされていたが、なんの因果か、高等部では俺になってしまった。
そのせいで、俺は一部には猛烈に嫌われているらしい。
生徒会も含めて…。
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