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第53話

パンっという発砲音と咄嗟にみーくんを庇う平蔵。 「へいぞおおおお!!」 みーくんの泣き声にも近い叫びが部屋に響いた。 「平蔵!」 広瀬は平蔵の名前を呼びながら叔父の元へいき、銃を取り上げて殴りつけた。 その殴りつけた事で叔父は力なく床に倒れ込んだ。 「先輩、発砲音が」 後輩が駆け上がってきた。 「コイツ頼む、主犯格だ」 後輩に叔父を託して平蔵の元へ急いだ。 平蔵はみーくんに寄りかかり顔を歪めている。 「平蔵、どこに当たった?見せろー」 慌てて広瀬は平蔵の身体に触る。 「ちょっと、……衝撃……きた……いてぇ」 平蔵は脇腹に手をやる。 「脇腹か?」 広瀬は平蔵の上着をめくるがそこにあったのは財布。 「さい……ふ?」 広瀬は財布を取り出す。 傷が入った財布と銃弾はそれていたみたいだ。 財布をかすめ、壁に当たったようだった。 「それ……親分……みーくんの祖父に貰った財布」 「えっ?」 広瀬は財布を見て「なんだ、あの人、お前可愛がってたから守ってくれたんだなあ」と笑った。 平蔵もそうだと思った。 みーくんを守って欲しいと願ってくれたのかも知れない。 「でも、一応……病院だな……みーくんも」 広瀬は平蔵の背中を叩く。 ◆◆◆ 診察では2人とも怪我なしだった。 叔父達はみーくんの誘拐で警察に逮捕された。 みーくんも事情聴取されたが広瀬が精神科医と一緒にと願い出てくれて、ゆっくりと事情を話す事になった。 なんせ、声を出せるようになって直ぐなので言葉は思うように使いこなせないものだから。 「ゆっくりと大丈夫だよ」 広瀬はみーくんの頭を撫でる。 「耳で聞いてるから頭は回るんだけど、しばらく言葉を発していなかったら思うように言葉出て来ないんだ……俺が経験してるから、辛さわかるよ」 「そう……なの?」 たどたどしく話すみーくん。 「うん、事故でね顎とかやっちゃって話せるようになるまで時間かかったんだ……それに……他の奴より平蔵と先にたくさん話した方がいいだろ?」 広瀬はふふっと笑って「じゃあ、ちゃんとみーくん寝かせろよ……あ、あと、お前の子分はみーくんを助けた事になるから注意だけで済むよ」平蔵をみた。 「野獣にならないように平蔵親分」 肩を叩いて嫌味を言う。 「馬鹿野郎!」 平蔵は笑って答える。 広瀬が出て行ったあと、みーくんと見つめる合う。 「名前また呼んで?」 平蔵はみーくんの頬に手をあてる。 「へい……ぞう」 照れたように名前を呼ぶ。 「みーくん……良かった……本当に」 平蔵はポロポロと涙をこぼす。 「なき……むし」 可愛らしい声。みーくんの声。 平蔵はみーくんを抱き締める。 「平蔵……」 「なに?」 「だいすき……」 耳元で囁かれた。 「うん……みーくん。俺も好きだよ……愛してる」 平蔵も耳元でささやく。 「僕が話すの怖くない?」 「なんで?怖くないよ?」 「だって……」 その先を言わせないように平蔵は唇を塞いだ。 軽くキスして「みーくんの声は思った通り可愛い……もっと名前呼んで欲しい」と微笑む。 「大丈夫だよ、みーくん……前みたいにならない、俺がずっと側にいるから、これからみーくんとたくさん話をしたい」 「平蔵……」 みーくんはポロポロと涙を零す。 「名前、たくさん呼んで欲しい」 平蔵はみーくんの涙にキスをする。 これから先……守るのは自分だ。みーくんを守るのは自分でありたい。 今まで耐えていた分、笑顔にしてあげたい。そう思う。

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