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第3話

寝室をそっと出ようとしてがシャンとゲージに足が当たって大きな音が出た。 平蔵は慌ててベッドを見る。男の子が起きてしまうんじゃないかと……いや、起きた方がいいんだけど。でも、折角寝ているし……。 でも、起きないみたいなのでゲージを持ち上げて寝室を出た。 ゲージ……片付け忘れていた。 平蔵は物置へとゲージを持って行く。 ゲージと行ってもウサギを入れるカゴに近い大きさ。 この中に入っていたのはハリネズミ。 平蔵のペットだった。 そう……だった。過去形。 少し前に死んでしまったのだ。知り合いの獣医は寿命だと言っていた。 「みーくん」 平蔵が呟いた名前はハリネズミの名前。 平蔵を癒してくれた無二の存在。 凄く可愛くて小さくて守ってあげないと死んでしまうんじゃないかと思った。 仕事でイライラした気持ちも寂しい気持ちも全部癒してくれた。だから結婚出来ないんだと友人に言われた。 別に結婚には興味はない……。 好きになる相手はいつも男だから……結婚には至らない。 一人で生きていくのは慣れるものだな……と思う。 平蔵はゲージを物置にしまうとその場から離れた。 ◆◆◆ さて……どうしたものか。 ベッドは1つだけ。 一緒に寝るわけにもいかないのでソファーかな? 風呂に入り、あの子の着替えいるよな……と考えた。 朝起きたらとりあえずは風呂に入らせよう。あと、飯いるよな。 平蔵は風呂から出るとあの子に合いそうな服を探す。 改めて自分の服を見るとオッサンくさい。 まあ、オッサンなのだから仕方ないけれど、10代くらいの男の子は嫌がるかな? 飯も含め、平蔵はスマホに手にすると電話をかけた。 「平蔵、なんだよ?お前こんな時間まで仕事してんのか?」 電話の向こうから声が聞こえてきた。平蔵と同じくらいの年齢の声。 「悪いけど、10代くらいの男の子が着る服と朝飯届けてくれるか?」 「は?10代?……お前、未成年にとうとう手を出したのか!!」 怒りというか、情けないというか……なんとも言えないトーンで言われた。誤解なのだが、いきなり言われたらそう思うよな?と平蔵も思う。 「いくらみーくんが死んで寂しいからって未成年は捕まるぞ!って、まあ、お前なら揉み消せるし、そもそも表沙汰にはならなさそうだからな」 「……お前、俺をいつもそんな目で見ていたのか?誤解だ……ちょっと訳ありなんだよ」 「訳あり?」 「そう、訳あり……よろしく!」 平蔵は電話を切ると毛布をソファーへ運び、寝転がる。 あ、名前……。 あの子、名前はなんて言うのだろう? 明日……聞いてみよう。 そう思いながら目を閉じた。

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