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第7話
「服は?」
「ああ、これ……って、あの子どうするんだ?」
「帰りたいって言うなら送っていくけど」
「帰りたくないって言ったら?」
「……置いておく……かな?」
自信なさげに言葉にする。
「お前なあ、拾ってきた犬猫じゃないし、ましてやハリネズミでもない」
「そうだけど……何か事情ありそうじゃないか?いま、色々とほら……虐待とか?」
「虐待は昔っからあるだろ?ただ、今の時代はネットワークが発達しているから情報が早くくるし、隠れていた情報も届いているだけ」
確かにそうだ……いじめも虐待も昔っからある。ただ、表に出ていなかっただけ。
守ってくれる大人もそんなに居なかったし、自分でなんとかするしかなかった。
広瀬はきっと、自分の事を言っているのだ……だから余計にあの子が気になって、ちゃんとしてあげた方が良いと遠回しに言っているのだ。
「コンビニで拾ったのは俺だからちゃんとするよ」
平蔵はサンドイッチを食べているみーくんに視線を向けた。
◆◆◆
「みーくん服」
食べ終わったみーくんに袋を渡す。
「俺のはデカいだろ?」
するとみーくんは首を振る。
「服が好みじゃない?」
袋から出した服はちゃんと若い子向きでしかもブランド品だった。
みーくんはそれも違うと首を振る。
「あ、平蔵の服が気に入ったんじゃないか?」
広瀬の言葉にみーくんはコクンと頷いた。
「デカいだろ?」
ダボダボの服をみて平蔵は言う。
みーくんは大丈夫と首を振る。
本人がそれが良いと言うのならば仕方ない。
「なあ、みーくん、俺は今から仕事なんだよ……みーくんはどうする?」
その言葉にみーくんは俯いてしまった。
帰るとはやはり言わないし、そんな素振りを見せない。
「じゃあ、留守番頼めるか?」
その言葉でみーくんは顔を上げて嬉しそうな顔をした。
「みーくんは未成年じゃないよな?学校とか……」
みーくんは首振ると指を2本ともう片方の指で丸い形を作った。
「20歳?」
みーくんは頷く。
まあ、未成年ではないが……それは本当の年齢なのだろうか?幼く見える。
「じゃあ……お昼に様子見に来るから留守番お願いするぞ?」
みーくんは頷く。
「あ、飲み物がなかったな」
その言葉にみーくんはキッチンの水道を指さす。浄水器をつけてはいるが若い子が水っていうのも……ジュースとかじゃなくていいのか?と心配してしまう。
「平蔵、俺が買ってくるからお前、仕事行く用意しろよ」
広瀬がそう言ってくれたので平蔵は着替えに行った。
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