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第9話
平蔵は途中、みーくんの昼食を買った。
何が好きか分からないからおにぎりやらサンドイッチやら沢山。
そして、自分用におでんを買う。昨日、食べれなかったから。
そして、おでんをガツガツ食べていたみーくんを思い出して2人分買った。
◆◆◆
マンションへ着くと急いで部屋へ。
鍵を開けて中へ入ると広瀬が出て来た。まだ、居てくれたのかと安心する。
1人で留守番は寂しいかもと思っていたから。
「広瀬も昼食食べるか?」
「いや、もう出るよ仕事あるから……あ、服勝手に借りた、風呂掃除してたら水かぶったから」
「は?なんで風呂掃除?」
「みーくんが一宿一飯の恩で掃除したいとかいうからさ」
「みーくん」
いい子なんだな……と平蔵は思った。
広瀬は仕事へ行ってしまったので、昼飯を持ち中へ。
みーくんはせっせと洗濯をしているではないか!掃除だけではなくて、いい子だなと本当、感心してしまう。
「みーくん、お昼」
声をかけると笑顔で平蔵の側に来た。
「何がいいか分からないから色んなのを買ってきた」
平蔵はテーブルに買ってきた食べ物を並べた。
その中からみーくんが選んだのはやはりおでんだった。
「みーくんはおでんが好きなのか?」
そう聞くと頷く。
「そうか、俺もなんだ」
みーくんと向かい合わせに座りながらに言う。
「掃除してくれたんだって?ありがとう……いいのに気を遣わなくても」
平蔵の言葉にみーくんは首を振り、おでんを指さす。
ありがとうと言いたいのだろう。
「今夜はおでん作ろうか?材料買ってくるから」
その言葉にみーくんは笑顔になって頷く。
「みーくんは何が好きなんだ?具材は?」
平蔵はそう聞いて、言葉話せなかったなと慌ててポケットからボールペンと書ける紙はないかとキョロキョロして広告を見つける。
広告は裏側が真っ白な場合が多い。手に取った広告も裏側が白かった。
みーくんにボールペンを渡す。
「好きな具材書いてごらん」
すると、みーくんはタマゴ、牛すじ、ダイコンと平蔵が好きな具材を書いた。
「みーくんも俺と同じ物好きなのか?」
みーくんは頷く。
「そっか、一緒だな」
平蔵は嬉しくなってみーくんに微笑む。
「嫌いな食べ物はあるか?」
その質問にみーくんは無いと書いた。
「へえ、偉いな!俺なんて未だに人参とカボチャがダメなんだよ」
すると、紙にどーして?とみーくんは書いた。
「甘いだろ?甘いのはあまり好きじゃないんだ、おかずにならない」
そう答えるとみーくんは笑った。
「酒飲みだからさ……辛い物とか好きなんだ」
するとみーくんはトッポキ食べたいと書いた。
「トッポキか、俺も好きだぞ?好きな物似てるな俺たち」
平蔵はまたもや嬉しくて笑う。
久しぶりかも知れない……こんな風に笑うのは。
ハリネズミのみーくんが居た時も楽しかった。餌を美味しそうに食べる姿を見るのが癒しだった。
今は、目の前に人間のみーくんが居て、楽しそうに笑いかけてくる。
それが嬉しい。
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