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第26話
「どういう事?」
平蔵はきっと冗談を言っているのだと思った。でも、こういう冗談を言う子ではないと思っているから、きっと、事情があるはず。
みーくんは平蔵の方へ倒れ込んできた。
「みーくん?」
みーくんは震えていて……呼吸がおかしかった。
「みーくん、大丈夫、大丈夫だよ!怖くないから」
平蔵はみーくんを落ち着かせる為にキツく抱き締める。
みーくんの弱々しい腕が平蔵の身体に回ってきた。
「みーくん、大丈夫……俺がいる」
自分が居たからって何も無いかも知れないけれど、それでも言わずにはいられなかった。
◆◆◆
広瀬は自分の情報網と警察に居るというのを利用してみーくんの事を調べた。
確かに姫探しをしていた。
平蔵の家にみーくんが来た日に行方不明になっていた。
年齢は18。
みーくんは2歳サバをよんでいたみたいだ。
「広瀬先輩、はい、これ」
後輩が資料をコピーしてきた。
そこにはみーくんの家族構成が。
「広瀬先輩ってマル暴じゃないのにどうして調べているんですか?」
「……いや、ちょっと頼まれて今度奢る」
「いや、先輩にはいつも世話になっているからいいんですけど、力になれるんなら」
「ありがとう」
広瀬は後輩に礼を言う。
みーくんの正体がやっと分かった……。
平蔵に着いてきたのは偶然?それとも必然?
「両親亡くなっているっていうか……前にニュースで見たな……自動車事故」
「そうですね、長男が亡くなったから遺産というか組そのものが行方不明の孫に権利が移って、次男がいるんですが……この前亡くなった親分はこの次男には遺産を渡さず全て孫に……」
「不仲なのは聞いた事があるな」
「この孫は両親が亡くなるまでは学校とか行ってたみたいだけど、亡くなってからは行っていない……」
「ショックで?」
みーくんは喋らないけれど、この事がショックで喋れなくなっているのか?と広瀬は考える。
「あー、これ、あくまでも噂ですよ、ほら、ネットとかで良くある都市伝説というか、オタクが話すような内容」
「何?」
「この孫……噂では力持ってるっていう」
「は?」
華奢なみーくんが怪力には見えなかったので広瀬はキョトンとなる。
「超能力というか……スペックってドラマあったでしょ?あんな能力」
「はあ?」
広瀬は眉間にシワを寄せる。
「いや、俺が言ったんじゃないです!一部での噂で」
慌てる後輩。変な目で見られていると察した様だ。
「どんな力?」
「言葉に力があって……発した言葉通りに人が動く」
「ますます、分からない……日本語話せ」
「話してますって!例えば……死ねっていえば死んじゃうみたいな?」
「アホくさ」
「噂ですってばー!まあ、この孫、いろんな所がやっきになって探してますけどね。たぶん、遺産欲しいんじゃないですか?次男なんて、この孫を殺すようにって密かに命令していると話がありますし……命、狙われている感じですよ」
それだ……。
みーくんが逃げていたのは……きっと、殺されそうになったからだ。
だから、外に出るのを嫌がっているんだ。
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