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第28話
みーくんはどんな思いで逃げてきたのだろう?
平蔵は彼の状況を考えるといたたまれなくなる。
……そうだ、みーくん、自分が親を殺したって言った。
平蔵は彼が眠る前に文字にした言葉を思い出す。結局は殺したまでしか聞けなかった。
本人が動揺してしまい宥めるので必死で……そして、やっとさっき眠ってくれたのだ。
梅野の長男は確かに亡くなっている。
葬式は行かなかったが事故だった。
ニュースにもなった……夫婦で事故に遭った。道路で2人ともトラックに……。そういうニュース報道だった。
じゃあ、みーくんは何故……自分が殺したと言ったのだろうか?
「なあ……みーくんの親って事故だったよな?」
平蔵は広瀬を見る。
「そうだけど……どうした?」
広瀬は持ってきたみーくんに関する書類を平蔵の目の前に出す。
「事故だよなあ……」
書類にも事故と書いてあるのを確認する平蔵。
「これ……確か子供の目の前……みーくんの目の前で事故に遭っているんだよな」
「えっ?」
平蔵は書類から広瀬へと視線を移す。
「みーくんが話せない理由ってこれじゃないかな?事故を目の前で目撃した……ショックで失声症ってやつ」
「……みーくんは自分が両親を殺したって」
「えっ?」
平蔵の言葉に驚いたように返事を返す。
「さっき……突然……文字にしたんだ……でも、詳しくは聞けなかった……凄く動揺して、過呼吸みたいになりかけたから……今は落ち着いて眠ってるけど」
「殺した……そう思い込んでいるんじゃないかな?目の前の事故だから混乱して」
「どういう事故?」
「調書には夫婦が飛び出してきて……運転手は驚いてクラクション鳴らしたけれど、逃げる風でも……トラックの方を見るわけでもなく……ただ、そこに立って……いや、動かなかったって感じらしい」
「みーくんの両親も怖くて足がすくんだんじゃないかな?」
確かに人は予想外の出来事が起きた時はどうしたら良いか分からなくなるものだ。
みーくんは目の前で事故を見て助けてあげれなかったからそう自分が殺したと思い込んだのだろう……そう考えるとみーくんが不憫だ。
「そうかもな……で、みーくんの状況ってやばいんだろ?」
「やばいだろうな……逃げて正解だし、平蔵に保護されたのも正解」
果して自分の保護されたのは正解だろうか?手を出してしまったのに……しかも10代にいい!!!
平蔵は顔が熱くなってしまった。
「……お前、本当にわかりやすいのな?今……考えている事、当てようか?」
「あ、当てなくてもいい!!」
平蔵はさらに顔を熱くさせる。
コトッ……、
小さく物音がして振り返るとみーくんがこちらを見ていた。
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