「みーくん！寝てないと」 平蔵は慌ててみーくんの側へ。みーくんは大丈夫と首を振る。 寝かせる時にきちんと服を着せていたので裸ではない。 みーくんは平蔵をじっーと見つめる。 見つめられて「話……聞いてた？」と聞いた。 みーくんは頷く。 「みーくんはオヤジさ……いや、梅野組の……」 みーくんはまた頷く。 「裸足でいたのは……逃げてきたから？」 みーくんは頷くと平蔵の手のひらに「しらないおとこにうられそうだったから」と書いた。 「えっ？」 みーくんは平蔵に抱きつく。 着の身着のまま……という感じだったのはそういう事？ 平蔵はみーくんを抱きしめる。 怖かっただろう。 抱きしめられたみーくんは顔をあげて平蔵を見つめる。 「大丈夫だよ……ここにはみーくんを傷つける人はいないから」 平蔵はみーくんに微笑みかける。 すると、安心したように頷くと少し離れてまた、平蔵の手のひらに『にげてもつかまるかもしれない だったらはじめてはすきなへいぞうがいいって さそったのごめんなさい 』と書いた。 「みーくん」 平蔵はみーくんの頭を撫でる。 「謝らなくていいんだよ……」 「平蔵、みーくんこっちに……ホットミルク」 広瀬が気を利かせてホットミルクを作っていた。 みーくんを座らせるとホットミルクを渡す。 平蔵はみーくんが手のひらに書いた事を広瀬に伝える。 「そうか……辛かったね」 広瀬もみーくんの頭を撫でる。 みーくんは少し笑った。安心したような顔で。 あの日……突然、叔父が来た。 祖父が亡くなって悲しいのに遺産がどうのって…… 親が亡くなったのにお金……それが嫌で逃げようとしたら捕まって……。 「お前……可愛い顔をしているから高く売れる……お前でも稼げるよなあ…お前、喋れないし、それに変な噂あるよな？お前……人を操れるんだろ？それで兄さんを……」 その言葉で身体が凍りついた。 動けなくなった所を抑えつけられて、服を脱がされた。 知らない奴らが興奮しながら身体を触ってきて気持ち悪かった……。 脚を開かせられて……無理やり指で掻き回された。 それをニヤニヤしながら叔父は見ていたが出て行った。その後……なんとか逃げれた。 逃げて……逃げて……疲れて……どうしようもなくて……また、連れ戻されて……今度は……。 それが嫌で死にたくなった時に声をかけられた。 顔をあげたら優しい顔の……。 小さい頃会った事があって、ほんの少しだけ遊んで貰って……その後、大きくなってから公園で見かけた。 ハリネズミと全力で遊ぶ大人をはじめてみて……心がポカポカしてきた。 みーくん！ ハリネズミの名前を呼んで……凄く優しい笑顔で。 昔、遊んでくれた時も「みーくん」って優しい顔で笑ってくれた。 また、名前を呼んでくれないかな？笑ってくれないかな？ そう思っていた。 駐車場で出会った時……つい、着いていってしまった。 ポカポカと温かいこの人に触れたくなったのだ。