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第31話

「みーくんを探している奴らをどうにかしないと安心出来ないよ」 広瀬の言葉に平蔵も頷く。 みーくんが怖がらずに外に行けるようにしてあげたい。部屋の中でずっと怯えて暮らすのは可哀想だ。 みーくんは平蔵の手のひらに『 おかねいらないのに』と書いた。 お金は要らない。それは祖父が残してくれた遺産。 「みーくん、そのお金はじいさんがみーくんの為に残してくれたんだ。受け取ってあげないと」 平蔵はみーくんを見つめる。 みーくんは首を振ると手のひらに『 ペンとかみ』と書く。 平蔵はみーくんに紙とペンを渡す。 するとみーくんは紙に『僕にはお金を貰う資格はない 』と書いた。 「どーして?」 目を見つめてくる平蔵を見つめ返すみーくんは瞳をじわりと潤ませると紙に『 僕は人殺しだから』と書いた。 人殺し……先程、それで動揺して大変だったのにどうして彼はそれを言うのだろうか? 言葉にするという事は聞いて欲しいという事だ。そうでないと自分から言ったりしない。 「みーくん……人殺しって、君の両親は事故だろ?広瀬に聞いたよ」 平蔵の言葉にみーくんは違う、違うと首を振る。 少し動揺しているように見えて平蔵はみーくんの肩を掴む。 「みーくん、落ち着いて……無理に話さなくてもいいから」 みーくんは平蔵を見つめる。 みーくんの瞳は潤んでいて……何かを訴えているように見える。 訴えるというより『助けて 』と叫んでいるように見える。 みーくんは何かから解放されたいようにも見えて……この告白をちゃんと聞いてあげないといけないような気がしてくる。 みーくんはペンを動かす。でも、その手は震えて上手く書けないようだ。 その度に平蔵はみーくんの手を強く握り「大丈夫だ」と言葉を繰り返した。 ◆◆◆ みーくんが震える手で書いた言葉は『 お父さん達は事故じゃない。僕が止まれと命令したから 僕の言葉は無条件で人を操れる』だった。 平蔵と広瀬は顔を見合わせる。 広瀬が聞いたみーくんの変なウワサ。 言葉で操れるという……漫画か映画みたいなそんな事が……あるのだろうか? 「みーくん……何言ってるんだ……そんな事が」 平蔵は困った顔をしている。どうして良いかわからないから。 信じろって言われても無理だろう。そんな馬鹿な話があるわけがない。 『ある……僕は言葉で人を殺せる。1度死なせてしまう所だったから 』 みーくんは震える手でそう書いた。 そう、初めは気付かなかった……。 まだ小さかったから気づかなかった。 気付いたら皆、言う事を聞いてくれてて、遊んで……そんな無邪気なお願いばかりだったから大人もみーくんも気付かなかった。 外にいくようになり幼稚園で1番友達がいるのはみーくんだった。だって、友達になろ?って言えば誰でもなってくれたから。 嬉しくて……気付かなかった。でも、もっと早く気付くべきだったのだ。

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