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第33話
祖父が可愛がっている人物だった平蔵。
ガタイが良くて一件、怖そうに見えるけれど笑顔が可愛い。
公園で犬や猫とも仲良かった。
動物の方から近寄るのだ。
平蔵も嬉しそうに身体全体をわしゃわしゃと撫でてやっていた。
その姿を見ると不思議と暗い気持ちがどこかへ消えるのだ。
「平蔵ならお前を分かってくれそうだな」
平蔵を見つめる自分の頭を撫でながら祖父に言われた。
あの人……分かってくれるかな?
人殺しの自分でも怖くないよって……本当に友達にもなってくれるかな?
そう思うようになっていった。
そして、祖父が亡くなり……自分を理解してくれる人が居なくなった。
途端に世界は暗闇になってしまった。
叔父の策略で男達にレイプされそうになって逃げて……もう、死んだ方がマシなんじゃないかって思った時に目の前に平蔵がいたのだ。
ぶっきらぼうな言葉なのに優しい温かみがある口調。
笑うと可愛い顔。
もう、どうなってもいいと思っていたし……どうせ死ぬなら……この人に頭を撫でられてからでもいいかな?と甘えてしまった。
◆◆◆◆
みーくんは今までの経緯を懸命に書き綴た。
涙をポロポロ零しながら。どれだけ辛かったか平蔵にも分かる。
言葉を封印するくらいに傷ついて……自暴自棄になって……でも、それでも懸命に生きてきたのだ。
「みーくんは偉いな」
平蔵はみーくんの頭を撫でた。
偉い、偉いよ……と涙でグシャグシャになりながら撫でてくれた。
その手のひらは大きくて温かい。
祖父と同じ温かさがある。
「大丈夫だよ、みーくん!ここに居て欲しい」
平蔵はみーくんを力いっぱい抱き締めた。
抱き締められたから涙がまた溢れてきて平蔵にしがみついて泣いた。
でも、声は殺して泣く。
「みーくんいいんだよ声は殺さなくて……俺はみーくんの声が聞きたい」
抱きしめながらに言葉にする。
でも、みーくんは首を振る。きっと、平蔵を傷つけてしまうと思っているから。
「大丈夫……みーくんは優しいから言葉にも優しさが宿っているよ?友達がみーくんに従ったんじゃない、やってあげたかったんだと思う。本当にみーくんと友達になりたかったんだよ」
その言葉でみーくんはさらに大粒の涙をこぼす。
平蔵は自分が思っていた通りの人だった。
祖父が平蔵なら分かってくれると言ったのも本当だった。
「みーくん、俺の名前呼んで?」
頭を撫でながら言われたけれど、みーくんはギュッとしがみつくだけ。
「心の整理が出来ていないから急には無理じゃないかな?」
広瀬はテーブルにコーヒーとホットミルクを置く。
「ほら、二人ともまずは落ち着こう……みーくんもね、ホットミルク落ち着くよ」
優しく言われたので二人は離れて広瀬が作ったコーヒーとホットミルクをそれぞれ手にする。
「平蔵は泣き虫だからなみーくん驚いただろ?」
クスクス笑って場を和ませようとする広瀬も優しいとみーくんは感じる。
「学生と時とか図書館で悲しい話とか読むと号泣するだぞ?」
「やめろ!!」
恥ずかしい過去を暴露されて平蔵は慌てる。
「捨て猫とか捨て犬とかほっとけないタイプ。1度制服に子猫入れて学校きたんだよ、授業中にニャーニャー子猫が鳴き出して授業中断、先生も猫好きだったし、女子は可愛いもの好きだからな……みんなで保健室にいってミルク温めて子猫にあたえたりね……平蔵いると面白くて飽きなかったなあ」
広瀬はしみじみとした顔で懐かしんでいる。
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