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第3話 高校三年生

 「佳孝、今日の帰り本屋に寄って帰ろうぜ。この前お前が言っていた本買ってみようかなと思ってさ、タイトルあれ何だったっけ?」  中学から一緒の佳孝といつ仲良くなったのか覚えていない。気が付いたら友達になっていた。もともと友達は多い方だ、いや多分当時通っていた高校でも一番友人が多かったと自負している。浅く広く、決して深入りしない。得も損にもならない距離が大切だった。  波風を立てず、誰とでも仲良く、そうすることが大雅にとっては一番大切なことだった。別に誰かに依存することもない。誰もが皮一枚違うだけで人間なんて同じだと思っていた。誰と一緒にいても同じように楽しいし、同じようにつまらない。  誰かに振られたと泣いている友人を見て、なぜ泣いているのか理解できなかった。駄目なら他を探せばいい、いくらでも相手はいる。なぜその人じゃなければならないのか、それが不思議だった。だから誰かに告白されれば、たとえ誰からでも断らない。なぜなら相手がだれであろうと同じだからなのだ。  いつも周囲には人がいて、いつも話題の中心にいた。けれどその位置が心地よいと思ったことも無かった。常に不安定、アンバランスな足場の上に立っているような気がしていた。  「今日は彼女は……いいの?」  「ん?彼女って誰のこと?」  「……二組の鳥山さん」  「えっと、あれ?先週振られたって、言わなかったっけ?」  付き合っている相手を優先できない。楽しいことが他にあればそれを優先することは悪いことではないと思っていた。相手も同じように自分の好きな事を優先して欲しいと伝えていた。時間が合えば一緒に過ごせばいい。セックスも求められれば、応えるだけ。このスタンスは崩したことがなかった。付き合い始めて数か月、早い時は数週間で何故か傷つけたつもりもないのに、女子の方から勝手に「傷ついた」と離れていくのだ。  「そう」  「そう、別れた。だから今日はお前と遊びにいきたいと思っているんだけれど。どう?」  「そう、本屋なら」  「本屋だから?」  大雅はけらけらと笑うと、スクールバックを肩にひっかけた。

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