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美人局大作戦→sideY

数のみでこれからすぐに乗り込むと言う士龍を、俺は一旦諌めた。 結構昔は思案深い方だったのだが、東に感化されたのか。 この数で事務所を取囲んだら、通報されてさすがに警察も動くだろうし、捕まるのは勘弁してほしい。 士龍いわく、警察を動かしても、恋人が助かればと考えたらしいが、死なば諸共な考え方は、俺は好きではない。 東流には誠士に、防弾チョッキとかくすねてくるように電話させた。銃とか持っている可能性もある。そのへんの武装や用意していくのは当然だ。 それと、秘策。 「シロ、ヤクザさんも男だからね。女には油断するだろ?」 諭すように言うと、士龍は東流とは違ってそうだねーと言って話を聞こうとする。 まあ、昔の士龍はどっちかと言えば俺と似たタイプだったしな。 「ヤッちゃん、その作戦はいいけど、でも、女いないよ?」 ぐるっと回りを見回して、昔のように可愛らしくこてんと首をかしげる。 こんだけの人数集められる派閥のアタマにはとうてい思えない。 2年のころから、東の最大派閥でいつか襲ってくると言われていたので警戒はしていたが、全くそんな気配はなく逆に不気味だと思っていたのは覚えている。 襲ってくるどころか、近くをその派閥のヤツをみたことがなかった。周りを見回しても、知らないヤツらばかりだ。 「俺が女装する。自慢じゃねーけど、そこらの女よりイケてるぜ」 士龍は俺をマジマジと見つめて、ぽんと手を叩いた。 「そか、ヤッちゃん綺麗だもんね」 邪気のない笑顔で言われると、すっかり毒気をぬかれる。 小学生の時は姿形も天使の様で微笑みは最高に天使だったけど、いまでもその笑顔だけは健在のようである。 「シロの昔の可愛さには負けるけど、任せておけ。美人局作戦だ、滅多に女装なんかしないんだからな」 「そうだよね。ヤッちゃん、イケメンだもんね」 おまえこそ、十分イケメンになっちまったよなと、思いながら 俺は、東流のおふくろさんに服を借りに一旦店に戻ることにした。 「まあ、あの橘病院のシロちゃんが?」 東流のおふくろさんと双子に襲撃じゃなかったことと、事情を話して、夜の仕事用の服を借りて着替えている。 「すげえ背が高くてイケメンになってたよ」 「ヤッちゃん、ブラジャーちゃんとつけてね。女は胸が命よ!」 おふくろさんは妙にパリパリと張り切っている。 胸にパッドをつめて、ひらひらした服を着ると、化粧道具を借りる。 「ダメダメ、ヤッちゃん。ヤクザの人向けの化粧じゃなきゃね。それじゃ清楚すぎるわ」 パタパタと少し濃すぎるかなと思うような化粧を施してくれる。さすが、ヤクザの嫁。それに長いこと夜の仕事をしてきただけある。 オヤジさんの関係のひともよく来るだろうしな。 「やっぱり、ヤッちゃん、すんげー美人ー」 北羅の素直な言葉になんだか気分がよくなる。 作戦通りにいけば、被害も警察もこないうちになんとかできるかな。 俺は、おふくろさんに渡されたヒールなしの靴を履くと、再度東流たちのいる空き地へと戻った。

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