257 / 405

討ち入り→sideY

防弾チョッキを着ているので、頭部をやられなければ大丈夫だと思うんだが、倒れている姿に焦りがつのる。 長いこと会っていなかったが、友達は友達だ。 俺の位置からは、駆け寄るにも少し距離があり、応戦中である。 「シロ大丈夫か?」 「脚やられた、……あるけなそう」 足ならなんとかなるか。 銃を放った男をボコボコにした後、東流は士龍に声をかけて、男を持っている縄ですかさず身体を拘束して、ぽいと無造作にほおりだした。俺は床に落ちている拳銃を蹴って遠くに飛ばす。 少しでも体力あるようなら、最後まで侮れない。 普通の高校生との喧嘩とは違う。 「テメェら、どこの組のもんだ」 息も絶え絶えの男を椅子の脚に固定する。しばらくは動けないだろうが、俺を指さして聞いてくる。 スカートが、少し汚れちまった。喧嘩しにいくことは伝えたけど、新しいのを買って返そう。 「3年B組。ほら、ダチが誘拐されたら助けにくるでしょ」 正確にはダチの大事な恋人ってとこだけど。 にっこり笑うと、後ろから、東流の声がする。 「ヤス、そっちは大丈夫か?」 「ヤクザにしては弱いね」 とりあえず、転がっている男たちを全部縛ったかを確認する。 「カツラとれてんぞ!」 ぱさりと士龍の手下から、カツラを手渡される。 「あ、さんきゅ」 銃声が響いてから約3分。そろそろケーサツとかきちまう、ヤバイかな。 「触ったもんは、残らず持って帰るぞ。証拠は残さないようにな」 とりあえず誠士に言われた通り手袋を嵌めてきたが。安全のため、士龍の血痕も持ってきたタオルでぬぐい去る。 「トール、そろそろ逃げないと!」 「分かってる」 トールに非常口を指さすと、ぐいっと俺の腕をつかんで引っ張る。 「おふたりさん、感動の再会は後にしてくれ、逃げるぞ。ケーサツくるから」 非常口を開けると足を怪我している士龍を囚われていた男が、肩に担いでいくのに振り返ってトールが声をかける。 真っ赤な髪の男は、よく見ても可愛くはなさそうだ。 とはいえ、さすがに俺には言われたくはないだろうな。 「康史、車もってきたぞ」 非常口の前で誠士は、俺に車のキーを渡す。 怪我人でる可能性もあったので、誠士に車をもってきてもらったのだ。 東流がシャツを破って士龍の足を止血してるのを見て、車の後部座席を開く。 「シロ、乗って」 脚をひきずっていて痛々しい。銃弾だし、痛いだけじゃないよな。 「ナオヤ、モトミヤ、アリガトな!」 士龍は声を自分の手下にかけている。こういうところは、上としても信頼できるってもんだ。 「トールはバイクで2人の護衛してやって。大丈夫とは思うけど」 どっかに、別働隊な組員がいないとも限らない。 「了解。送ったら帰る。したら、約束のデートしないとな」 そう言うと、心配そうに士龍たちを見つめる2人の背中を押すと、東流は俺に声をかける。 「ん。馬とかいろいろあるから楽しみにしてる」 わかったとバイクを置いた方へ向かうのを見やり、俺は運転席に乗り込んだ。

ともだちにシェアしよう!