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※【番外編】やくそく
「なあ、ヤス。マジでこの格好で行くのかよ」
黒いスーツと茶系に染めている髪をオールバックに撫でつけた姿にされて、あまりの似合わなさに鏡を叩き割りたくなる。
「すごくカッコイイよ」
康史自身も黒スーツに身を包んで嬉しそうに腕を組んでくるので、満足してるならいいかとも思う。
スーツが問題ではなくシャツ下には、あの貞操帯を着けているので、ケツの中に入れられた張形があたるところが疼いて仕方がない。
「我慢できなくなったら、脱いでいいから。その時はちゃんと言うんだよ」
俺の様子を見てとって、康史が囁いてくるがなんだか辛さが増すだけだ。
「スーツ、体を締め付けられてつれえぞ」
ぼそりと文句を言いつつも、背後から赤い首輪をつけられる不快感に、康史を見下ろす。
「なんだ」
「オレのモノって印。他の人に触られたくないからね」
可愛らしくにこりと笑みを浮かべられると、満更でもなくて俺は険しかった表情を緩めて、康史の肩を抱き寄せる。
康史の可愛い独占欲は、俺の気持ちを満たす。
何でもしてやりたくなる。
「血管止められると、なんか体の動きがうまくいかねえから、もどかしい」
貞操帯には張形とプラグがついているので、それだけではないのだろうが、身体中が熱をもってくる。
なるだけ表情に出さないようにして、玄関に向かう。
ともすれば、ここで脱いでねだってしまいそうだ。
「その割にはやいけどな」
「車はヤスが運転するだろ。流石に集中できねえから、事故る」
「当たり前だよ。意外に効いてる?」
貞操帯をつける時のローション、媚薬入りだったんだけどと、耳元で囁かれた。
そういうことか。
ようやく得心がいくが、奥歯を噛んでやりすごすことにする。
「中に突っ込まれてるせい、かと思ってた」
深い息を吐き出して拳を強く握って答える、康史の嬉しそうな表情を見下ろして、これで全部許したくなるのは因果だなと思いながら、駐車場へと向かった。
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