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happybirthday→sideY
店を出て、エレベーターに乗り込み、今度は1階に降りるボタンを押す。
かなり食べたので、東流も胃は満足したようだ。
エレベーターの壁に寄りかかり、俺の腕を軽く引いてくる。
人も乗ってないので、誘われているのだろうか。
「…………ヤス、オマエさ、バイクできたの?」
東流はエレベーターの中で壁にもたれながら、首を傾げる。
「いや、電車で来たよ。トールのタンデム乗せてよ」
東流は、軽く天井を眺めて少しだけ唸ると、ふっと息を吐き出し、
「タンデムな。いーけどよォ、実はさ、結構、今、キてんだよなァ」
僅かに東流の目元が熱を持ってるように見えるのは、多分気の所為じゃないだろう。
全く触ってもないのに、東流はいま欲情してんのか。
クリスマスもそうだったか。エレベーターでキスしただけで、イクくらいになっていた。
今日は、泊まりじゃないし、ここでキスはやめとこう。
こーいうシュチュエーションに東流は弱いってことか。
「……じゃあ、俺が運転しようか?」
事故らないだろうけど、何があるかわからない。
それに……俺が運転すれば、行き先の選択権は俺のものだ。
「ン…………わりぃな」
ポケットにゴソゴソと手を突っ込んで、バイクのキーを俺の手に渡す。
「何もしてねーのに、今にもイきそうな顔してるよね、トール」
耳元で囁くと、首筋を赤く染めて東流の強い目で、グッと睨み下ろされる。
本人、睨んでいるつもりはないんだろうけど。
「しょーがねーだろ。…………オマエがニコニコ可愛い顔して横歩くからよ…………っ、……くそ、可愛いすぎんだよ、バカ、早くかえんぞ」
エレベーターが開くと、大股で早足でまるで俺から逃げるように出ていく。
どっちが可愛いんだか。
まあ、東流にとってこの顔が武器になるってのは、ホントに俺にとっては幸運だったんだけどね。
渡されたバイクの鍵をギュッと握る。
行き先の選択権は、これで俺がいただいたってことだな。
東流のせいでこっちもかなりキちまった。近くの公園にでも寄って、ちょっとクールダウンしてくかな。
それとも…………今日の気温はそんなには寒くない。
夜空の中ってのも、悪くないな。とかね。
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