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卒業式予行→sideT
卒業式の予行のために、久々に登校したのだが、周りは俺の髪が黒くなったことに驚いていた。
まあ、確かにずっと長いこと色を変えていたしな。
「やっぱり、先生は信じていたよ。君がちゃんとした格好で卒業式に臨んでくれると!」
担任の松谷先生が突然駆け寄ってきて、がんがんと俺の肩を掴んで揺らす。
イヤミなので頭にくるし嫌いな先生だ。
人を外見でしかはんだんしない奴である。
「っか、髪の毛染めただけだろ。人間性は変わってねえ」
胸を張って言い切ると、松谷先生は何を思ったのか、俺から手を離してブルブルと震える。
「先生は馴れ馴れしかっただろうか?…………暴力はいかんぞ、暴力は、な」
俺が殴るとでも思ってんのかな。
「別に。暴力とか、好きじゃねえし」
ギャラリーが集まってきてうざいな。
と、思いながら自分の席に座る。
こうやって、教室の席に座るのも、これが最期なのかな。
「東流、久しぶり。元気してたか?髪の色、似合うな」
ハツラツとした様子で東山がやってくる。
「久しぶり、ヒガシ。そんなかわんねーだろ」
「灰色より、なんかワイルドだと思う」
「そか。まあ、俺の職場は髪色自由だし、また、変えるかもしれねーけど」
東山の言葉に気を良くして、女子に囲まれて撮影大会をしている康史を横目で見やる。
「相変わらず、日高はモテモテだな。妬ける?」
「いつものことだしな。どうせ、最後だしアレは俺のだから、別にやけない」
俺の言葉に東山は、おかしそうに笑いを浮かべる。
「イイね、その勝者の感覚」
「たまには、女たちに顔くらいは貸してやるくらいはいいよ」
撮影大会は、続いていて時折心配そうな顔をして俺をみる康史は、可愛い。
「まあ、学年トップの日高が答辞読むんだろ」
「ああ。そんなこと言ってたな。ヒガシは近い大学にいくのか?」
「いや、私立の体育大だから遠くなるな」
「そうか。就職は俺くらいだしなー」
「東流のトラック、乗ってみたいなあ」
東山は、素直な気持ちでそう言うので、俺はいいぜと頷いた。
「トオル、久しぶり!」
振り返ると、ポニーテールを揺らしながら、背中に腕を組んで、波砂が俺の背後にたっていた。
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