熱はひかねーし、康史は帰ってくる兆しもはない。 うだるような熱気にやられ、頭は朦朧として脱水症状をおこしているというのに尿意だけは収まらず、 縛られた自由にならない体をどうにか縮こめて、脂汗を浮かべながら必死に耐える。 あと数ミリでも動いたらきっと漏らしてしまう。 そんな状況でも殺意すら湧かないくらい、俺は憔悴しきっていた。 何でもかんでもこころの問題とは、よく言ったものだと思う。 普段は暴れ馬とも鬼とも言われる俺がこんなふうに縛られただけで、弱ってしまうとか考えられない。 康史の行動が分からなすぎて、俺はどうしようもなかった。 今までの憎しみとか、恨みつらみとか、みせてくれりゃあ単純に怒りを噴き出してす逃げることもできるってのに。 こんな状態で我慢している意味などないかもしれない。 康史は俺をこのまま見殺しにするつもりだ。 でなければ、４０度近い気温の最中に拘束したまま、置き去りにするだろうか。殺されるほどにくまれてたってのが本心か。 理由は、なん、だ。 喧嘩にひっばりまわされるのが、イヤだったからか。 それとも、あいつの親戚の元カノを悲しませて別れたからか。 俺なりに、康史のことは大事にしてきたってのに。 もう…どうでも…いい…か。あんなに……しんらいしてたのに。 あんなに………。 ガタンッと遠くで物音が響くのが聞こえる。 俺をこんな目に合わせている張本人だというのに、それでも物音が康史が帰ってきた音なのではないかと心待ちにしてしまう。 クーラーは、かけ忘れていっただけとか、どうしようもねえトラブルに巻き込まれただとか。 くらくらした頭で自分に都合良いように考える。 あ、ああ、俺ァ、アイツに嫌われてることを信じたくないんだ。 憎まれてるかもしれないということが、怖くて仕方がねーんだな。 思考回路がもう覚束無い。 呼吸も荒くなってきて、うまく空気を吸うことができない。 膀胱もたまらなく張ってしまって、身体を身じろぎすることもできない。 俺は、なにより、康史をなく、したくねー、んだな。 ヤツのせいでこんなことになっているってのに、自分のバカみたいな気持ちに、笑うしかなかった。