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聞けない顛末 →sideY

目を覚ますと、真っ白な病室で、ベッドの端っこに頭をくっつけて東流が眠っていた。 俺の頭には包帯が巻かれていて、なぜここにいるのだろうと一瞬考え込み、そして、絶望的な記憶と映像が溢れ出した。 「ルームサービスっていうから、油断しちまって……………ゴメン」 ホテルの扉を開けた瞬間に、なだれ込んできたやつらに頭を殴られ、体中を蹴られ殴られ意識を失ったのは記憶にあった。 気がついたら病室で、あとから看護婦に聞いたが東流は俺をずっと看ていたらしい。 ただ…………あの時、俺はブラックアウトしたままの東流をベッドに拘束していた。 意識がないまま、あの部屋で拘束されていた東流がどうなったかなんて、簡単に想像つく。 想像はつくのに、…………聞けない。 聞くのが、怖かった。 聞いて、俺に何ができるのか、東流が触れないことを俺が触れて、いいのか。 わからず、数日が過ぎている。 東流の表情はいつもと変わらない。あまりにもかわらなすぎるのが、逆に演技のように思える。 「トール…………そんで、あのよ……あの時は……」 俺が何を聞きたいのか、言い淀む俺の態度から分かったらしい表情で、東流は銀色になった髪を掻いて気にするなっていう表情で俺を見た。 「あーな…………俺も意識ぶっ飛んでたからよォ。俺もクスリでよく覚えてねえからさ、気にせずオマエは早く怪我治せ」 東流は嘘をつくときや、意図しないことをする時はいつもガリガリと髪を掻く癖がある。 だから、あの時のことを覚えてないっていうのは完全に嘘だろう。 奴等なら、絶対にあの状態の東流を見つけたら、陵辱して輪姦するだろう。 そして、もしも俺が奴らならそれをネタにユスる。 「トール……そんでその後は、ヤツらから何もねえのか?」 全治2週間の怪我だが、すぐに報復できないのがもどかしい。 何もないわけがないのは分かる。 東流が言わなくても誤魔化されても、どうしても分かってしまう。 「何も?…………何もねえよ。オマエ痛めつけて、俺に報復して気ィすんだんじゃねえの」 自分の髪を掻きあげて、大丈夫だと言う東流の顔はいつも以上に俺を安心させようとしてか、優しく見える笑みを浮かべてくる。 痛々しいくらいにみえる、まるで穏やかな表情。 こういう顔するときは、意地でも言う気がないってことなのだろう。 「俺は、トールがすげえ大事だ。だから……ちゃんと言ってくれよ」 東流は目を開き、一瞬彼自身も意識してはいないくらい分からないくらい泣き出しそうに顔を歪めたが、さっとすぐにもとの表情を作る。 「…………俺には、そんな大事にされるような価値ねえよ。」 消えいりそうな声で呟いて、思い余ったように椅子をたつと、俺をまっすぐ見つめる。 価値がないって…………どういうことだ? 聞き出そうと口を開きかけると、制すように東流はガタガタとパイプのベットを握って無意識に揺らし、俺を上から覗き込む。 「ゴメン。俺…………バイトいれちまったから、暫く見舞いこれねえ。…………だから、ヤス、早く治せよ」 東流はガシガシと自分の頭をかき乱すと、後ろ手で手を振って病室を出て行った。 ………ホントに…嘘つきだな…… 。 まずは、足治さないと……何もできない。 俺は、彼に、何もしてやれない。

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