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守りたいもの→sideT
「何度もしつけえな………行くっつってンだろ」
病院から出て、ブルブルと着信を何度も繰り返していた携帯を引っ張り出すと、不在着信の通知が山のように入ってた。
あの時、部屋に置かれていた携帯の番号を、奴らにとられた。
ロックはかけていたから、気を失ってる時に指紋で解除させられたのだろう。
見たくもない動画が添付され、脅迫の文書がメールで届いたのは翌日だった。
多分、頭の回る康史には俺が脅迫されているのがなんとなく分かっているのだろう。
さっきも何とか俺から聞き出そうという表情をしていたのを、俺は無理矢理スルーを決め込んだ。
言わないし、言う気もない。
今までみたいな関係でも、もういられるわけもないから、言う必要もない。
この病院の前にも何人かやつらの仲間がうろついているのを確認した。
俺が言うことを聞かなければ動画をばらまくだけでなく、怪我人の康史も襲うと言ってきたのだ。 病院を襲えば無事だとしても、もう病院では治療はできないだろう。
いつもの康史ならなんてことはない雑魚達だが、怪我をしている今は無理だ。
動画なんてどうでもいいし、そんな動画だけなら俺はそんな脅迫に乗る気はなかった。
でも、康史を傷つけることは絶対にさせるわけにはいかない。
俺は、携帯が再び震えるのを見で通話ボタンを指でふれた。
「あァ?…………少しはガマンできねーのかよ、相棒が起きたら行くッて話しただろ?」
耳に当てながら病院の入口を出て、駐輪場に向かう。
『まあ、相棒放ってバックレるようなヤツじゃないのは知ってるが、オマエに恨みがある連中が待ちきれないみたいでな』
電話の相手は、あの金髪野郎だろうなとは思う。
俺は自分のバイクのヘルメットを取り出す。
「ハッ、恨みとかいっても、ンな男のケツでもイイッていう、ブサイクなモテねー童貞野郎どもだろ。とりあえず、すぐ行くからよ。病院の前から兵隊引き上げとけよ」
電話を切ると、バイクのサドルの中に突っ込む。
少しでも、時間稼ぎになる、なら。仕方がねーよな。
一度輪姦されたら何度されたって一緒だ。俺のこころはそんなことじゃへし折れやしない。
守りたいと一度決めたものを、命に替えても守り抜くだけだ。
そのためなら、ケツがさけようとナニされようと、どうでもいい。
メットをかぶると俺はバイクにまたがり、指示された繁華街の雑居ビルへと向かった。
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