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朝メシ→sideY
「で、仲直りしたのね」
コンビニで、しこたまおにぎりやパンや弁当を誠士は買ってくると、仲良くベッドで転がっている俺たちをみて呆れ顔で呟いた。
俺は骨折で動けないし、東流は熱を出してぐったりとしている。
「仲直り?…………俺、ヤスと喧嘩してねえぞ」
不思議そうに誠士を見返す東流の表情にぶちあたり、誠士はどの口がいうかとばかりに呆れた顔で目を見開く。
昨日のは、確かに喧嘩ではないのだが。
よっぽど腹が減っていたのか、ベッドの上で東流はパンを両手に持って同時に食べ始めている。
「別れるとか別れないとかさあ、マジの修羅場だったじゃんか」
「あー、ありゃ喧嘩じゃねえしなァ。…………別に言い合うキモチもなかったし。喧嘩じゃねえ、アレはただの俺の弱気だ。」
両手のパンをもぐもぐ食べて飲み込み、東流は誠士に首を横に振ってふっと口元を緩める。
「…………まあ、それはヤスは器がでけえから、別れないにした」
いろいろすっとばしすぎた東流はの説明に、なんでか誠士を納得したように頷く。
「器がでかいねえ?どんなふうにだ」
誠士もどことなく嬉しそうだ。
「………………えーと、別れるなら殺してくれとか。なんか、そういうとこ?」
「ちょ……東流、東流……それ、こわいだろ。康史、病みすぎだろ?こわくねえのか」
「俺はヤスを、殺さないから怖くねえぞ」
「…………康史…………オマエは…………」
俺を責めるような目で見るが、正直なにが東流に響くか俺にも皆目わからない。
「病むとかよくわからんが、俺がいうサヨナラは、康史にとって、俺が康史を殺すのと同じくらいの衝撃ってことだろ……」
「まあ、間違いじゃねえな」
誠士は、わかったと頷く。こいつ中学からつきあっているが、あまり裏表がなく俺らのことも理解してくれて付き合いやすい。
コミュニケーション能力は高くて、人付き合いがうまいのに、どうして俺らとつきあってるのかなぞである。
なんというか、東流のオカンみたいな感じだ。
「なら、ヨカッタったな。ってことは、結局独り身は俺一人かよー。このリア充たちめ」
「ヤス、セージに女、紹介しろ」
もぐもぐと今度はおにぎりをほおばりつつ、俺に命じてくる。
本人はその気がまったくなくても、東流は命令に慣れた口調なのである。
まあ、夜は俺が命令してやるから問題はないんだけどな。
「ハイハイ。それじゃあ、足治ったら合コンでもセッティングしようか」
「マジか、うれしいぜ」
誠士はへらっと笑い、機嫌よく東流にメシを食わせる。
さて、明日になったらピアス届くかな。
この調子なら、東流の体もすぐ良くなりそうだ。
俺は別の期待を胸に、誠士のもってきた弁当を食べ始めた。
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