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プロポーズ →sideT

俺は、康史を見上げて強い視線でとらえた。 「オマエ、俺と結婚しろ」 してくれとか、したいとか願望とかじゃない言葉。 これは、俺の意思だ。 俺の意思に、康史がノーといえるわけがない。 一生俺と一緒に暮らしたいなら、俺の意見に頷くしかない。 「……って、結婚…………、え、結婚って」 康史は俺の言葉にはとが豆鉄砲くらった表情で、一瞬唖然として、そして綺麗な顔を真っ赤に染める。 本当に可愛らしい。 好きで好きで仕方がねえっていうのは、こーいうことだ。 「トール、どうやって………俺ら男同士だし」 暫く後に、YESでもNOでもなく、疑問が返ってきて、深くため息をつくと俺は体の力を抜いた。 どーやってとかそーいう細かいことは二の次だろ。 そこは、ハイかイイエで答えろよ。 ハイしか認めないけど。 「なんか適当に籍いれられんべ、よーしとかなんか」 「養子縁組?」 「それ、しろよ。オマエがエリートとかなんかになるまで待ってやっから。うちの親はテキトーだから大丈夫だ、オマエは自分の親説得しろ。」 早くハイっていわねえのかなと、喧嘩のときのように幾分俺は目に力を篭める。 俺と視線を合わせて、康史は膚を熱くさせて欲情したような表情を浮かべる。 「なあ……これってプロポーズ?」 「そーだ」 「え、俺がしたかった」 ちょっと拗ねた顔で唇を尖らせて、俺の体を何度となく抱き寄せる。 「ふ、バーカ、オマエは飼うとかアホ言ってっからだろ。先手必勝なんだよ」 つーか、まだ答えをもらってない。 いいかげんに俺も焦れてきて、眉を不機嫌に寄せた。 「ほら、結婚しろっつってんだ、早く答えろ。ハイかYESどっちか言え」 「どっちかって…どっちもだよ。ハイでYESだ。……てかこんな格好してんのに、なんでそんなかっけえんだよおおおお」 嘆くように抱きしめて、俺をすがるように見つめてくる表情が大好きだ。 綺麗な顔を歪めて康史はなきべそのような表情で見つめてくる。 つか、泣いてる。 拘束されて、抱き返せないから俺は頭を相手の肩口にこすり付ける。 オマエと一緒の時間が好きだ。 他には何もいらない。 ガキの頃からそうだった。それもずっと変わらない。 「……オマエのためならどんな格好でもしてやるし、どんな情けない姿にでもなってやる。犬でも性奴隷なんでもやってやるよ。だけど、飼うとかは駄目だ。俺がオマエを守れなくなる。それはイヤだ。俺はずっと、オマエを守りてえんだよ。わかるよな?」 耳元で俺は康史に想いを告げる。 守ってやるとかすげえおこがましいかもしれねえけど、全力で俺はそうしたいと思っている。 失うのは怖かった。 本当に怖かった。あの夏の日におこった出来事がまざまざとよみがえる。 絶望して、俺が何の力もでなくなるくらいだったのだ。 「変なこと言って……ゴメン。愛してるよ、トール。俺が、大学出て就職したら結婚しよう」 涙声で告げる優しい声が、俺は大好きだと思う。 欲しかった言葉もくれた。 だから、笑顔で告げる。 「おう。約束だ」

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