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クリスマスイヴ→sideT

囲みを蹴飛ばすように分けて、康史は俺の隣にくると腕をぐっと引く。 「ン、いや。じゃれついてきたから、頭撫でてやっただけだ。」 「へえ……じゃあ、行こうぜ」 地面に突っ伏す男を見下ろして、康史は足早に俺の腕をぐいぐいと引いていく。 「……ったく、ついてそうそう囲まれてるからビックリすんだろ」 ちょっと不機嫌そうな綺麗な横顔を眺めて、俺は歩を早めて康史の歩調に合わせる。 「帽子でも被ればよかったか?」 「いや………トールはオーラがあるから無理だな」 専門店のあるビルに入ると、エレベーター前で立ち止まる。 「オーラねェ?そんなに強くなるつもりもなかったンだけどな、オマエ守れるくれえで良かった」 ぼそっと呟くと、ふと表情を緩めて康史は俺の手をとってぎゅっと握ってくる。 手袋ごしだけど、凄くあったかい気がした。 「東高の因縁は俺のせいだしな。中学の時、俺が東高のボスのオンナを寝とっちゃって連れ去られた時、ムリだっていうのに、乗り込んでくれたじゃん……。俺守るのに、そんなに強くなる必要ができちまった……からだよな」 「そうかも。でも……さ、ヤスがオンナとっかえひっかえしてたのは……俺のせい?」 ピンという音が鳴って、エレベーターの扉が開く。 「叶わないって思ったら……ね。ヤリきれなくなってさ……トールは波砂と付き合ってるしって」 エレベーターに乗り込み少し大目の客の中にまぎれて、俺は口を閉じた。 ガラス張りのエレベーターから、いつもよりキラキラが大目の夜景が見える。 最上階で止まると、エレベーターを降りてちょっと高級そうなレストランの前で足をとめたので緊張する。 家族でもこんなところにきたことはない。 「……ヤス、こんなとこ大丈夫なのか?」 「貯金はたいたし、本命との初めてのイブだしね……」 柔らかい声で耳元で囁かれると、腰にキて身体の力が抜けそうになり、たまらず腕をぐっと掴んだ。 「……そ…そうか……来年は俺が……準備すンよ」 やべえな、声だけで勃起しそうになるとか、本気で俺の体終わってる気がする。 「期待しとく」 康史が照れたように綺麗な顔を緩めて笑うのを見て、心底可愛いくて仕方がなくなる。 レストランのボーイに案内されて窓際の夜景の綺麗な席に通される。 ボーイの人も男二人で何してるんだって表情をしているのがわかるが、気にもとめない。 「さすが、ヤスだよなー。マジで、夜景すげえよ……」 康史はコートを脱いで、近くにある上着かけにそれをかけると、椅子に座って俺を見上げる。 「トールが夜景で感動してくれるとは思わなかったけど、たまにはロマンティックもいいかなって」 「なんだよ。俺だって普通に感動するぞ」 キラキラといつもの倍は光っているであろう光の粒の煌きはオンナじゃなくても、綺麗だと思うし感動するものだ。 「で、よォ、俺からは……コレ……」 ガサガサとコートを脱いで、ポケットからさっきラッピングしてもらったプレゼントを康史の手の中にぽんっと置いた。 信じられないといった驚いた表情で、俺を見返し、そのラッピングをあけてじゃらっとウォレットチェーンを取り出してぎゅっと握り締める。 「ちょっとした、サンタさんなんだぜ、俺も」 椅子にふんぞり返る様に座って、康史の喜ぶ様子を見たくてつっと体を乗り上げて、顔を寄せる。 じっとチェーンを見つめる康史の目元が僅かにしばたいてぽとぽとと涙が落ちる。 「ちょ……ゴメン、これじゃイヤだったか」 「いや……すげえ嬉しくて……涙出た」 可愛らしく涙を拭いて笑う表情に、俺は再度ドキドキと鼓動を早め、たまらないくらいに欲情しているのを自覚した。

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