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クリスマスイヴ →sideY

プレゼントだといって渡された小さい包みの中には、革の飾りのついたごつめのデザイン鎖が入っていた。 記憶にある中で、東流からプレゼントなどを渡されたのは、初めてだ。 要らないものとかはよく渡されたけれど、そうではなく俺のためにと選んでくれたのが、嬉しかった。 思わず涙が零れて、驚いた表情の東流の顔がゆがんで見えた。 「…………泣くほど嬉しいとか、ホント……ヤスってさあ、すげえ可愛いよな」 へらっと笑いながら、目を細めて見つめてくる東流の嬉しそうな顔の方がよっぽど可愛いなと思いながら、俺はカバンの中から包みを取り出して、東流に差し出す。 「じゃあ、俺も……トールに……」 レストランとかホテルとかで、結構金を使ってしまったので大したものではない。 照れたように鼻先を指で掻いて、包みを受け取ると、東流はかさかさと中をあける。 昔から好きな龍と虎のモチーフのゴツゴツしたシルバーのペンダントである。 じっとそれを見つめて、東流ら自分の首にかけるとにっと口の端をあげる。 「うわー。かっけえ。俺こーいうの好き………アリガトな」 予約したクリスマス限定コースが次々に運ばれてくる。 いままで付き合っていた女にもここまでのことはしたことはない。 本命だから、そりゃあ気張るよな。 やっぱり本命じゃないと、自分はダメらしい。 目の前にどんっと置かれた大きなチキンに東流は目を輝かせている。 結構、これでもかというコテコテなものに東流は弱い気がする。 未成年なのでシャンパンが頼めないのは残念だが、代わりにジンジャーエールをもってきてもらう。 雰囲気というのは、結構大事なようで、いつもよりも東流の表情が上気しているように思える。 周りからは男二人で可哀想なんて目で見られているのかもしれない。 いつもより、こんなに幸せなんだけどな。 目の前に置かれていくスープやサラダを見つめ、目を輝かせる東流は本当に可愛い。 「ヤスと一緒にクリスマスとかって、中1以来だよな。あん時は、親と一緒にだったけど」 「中学になるとサンタさんがこねえって知って、トール落ち込んでたよな」 滅多に欲しいものをもらえるチャンスがなかった東流が凄く落ち込んでいたが、長谷川家の教育方針なのだから仕方がない。 「ケーキ食えるのは嬉しかったケドよ。お袋も稼ぎ時だったから、店の準備とか手伝わされる日にいつの間にかなってたけど」 目の前に並んだ食べ物を眺めて、懐かしそうに笑う東流にグラスを差し出す。 「じゃあ、初めての二人きりのクリスマスに乾杯」 「おー、乾杯」 笑顔を向ける東流に、俺は胸の奥が癒されるのを感じる。 こんな風にうまくいくなんて、たった半年前は考えもしなかった。 拒絶されることしかアタマになくて、どうやったらその体も心も支配できるのかそれしか考えてなかった。 ナイフを手にチキンを切り分けて口に含み、幸せそうに目を細める東流の様子が現実なのか、今でも信じきれずにいる。 スープをすすって、まだ夢の中の出来事みたいな感覚に大きく息をついた。 夢なら醒めないでくれ。 切にそう願う。

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