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クリスマスイヴ→sideY

「一緒に、トールとこういうとこにこれるなんて……夏休み前には想像できなかった」 「ンー?そうかー」 もしゃもしゃとリスのように口に食べ物をいっぱいほおばって、一気に飲み込むと意外そうな表情で東流は俺を覗き込む。 「アレだぞ……えーと、セージが言ってた。俺ら昔から両思いだっただろって」 グラスを傾けて、ジュースを口に含み上気した表情で顔を突き出してくる。 誠士は俺らを中学から見てきた男だ。 幼馴染だとしても、異様に仲がいいよなとか、普通弁当とか作ってくるかーとか気にはしてたみたいだが、そう見えていたのか。 東流の男前の部類に入る端正な顔立ちがぬっと俺に寄せられる。 鋭いきつめの目が、いたずらっぽく細められ、少し低く声をひそめる。 「まー、キッカケは必要だっただろうけどな。俺、バカだから男と男がセックスできるとか知らなかったしよ」 東流は基本的にかなりの情弱である。自分の父親の家業すら知らないくらいだ。 バカだからとか、知る、知らないの問題ではない。 できるっていっても、普通にはではないし、到底考えつかないだろう。 周りの情報など殆ど知らないし、興味をもてないから気にもしないだろう。 だから、俺は東流に思いも伝えに、理解なんかできないだろうと、強姦して監禁するとか卑怯な手を使ってしまった。 「でもよ、最初にちゃんと告白してくれたら、俺は断らなかったと思うぜ」 鈍感は俺のほうだったのだろうか。 東流の素直な言葉に、自分の行動がおかしく思えて思わず笑ってしまった。 「嫌な思いさせちまったよな。あの時は……」 「熱中症になったけどな……まあ、アレは俺の服選びにいってくれてたんだし……。オマエの行動の全部が俺っていうなら、ソレは嬉しいことだ」 スープをすすって、口端をあげてにっと笑う東流に心底見ほれる。 「トール……」 短絡的で、基本的に深い考えはもたない性格。 さっぱりとしすぎて、基本的に執念とか執着はもってない。 その東流が俺の顔だけは気に入って、それを守ろうとしてくれているのに、いつも俺は優越を感じていた。 「それに、なんだかんだセックスはキモチいいしなァ。こーやって嬉しい気持ちだとよ、めっちゃシたくてたまんなくなるのよ、俺」 あっけらかんと言ってのけるのは、本当のことだろう。 AV見てもオナニーもしないほど性欲に乏しかったのに、自分からシたいと言うほどに、東流の体はすっかり快楽墜ちしている。 肌がいつもより上気して見えて、上機嫌なのか鋭い表情も今は本当に柔らかい。 いつもより饒舌なのは、本当にこのシュチュエーションに浮かれているのだろう。 「あのさ、この上のホテルも予約してあるんだ」 「マジか。ヤス、なんだかオトナだな……。アレだ、性なる夜?」 もしゃもしゃと食欲を満たして、ベタベタなシモネタでおかしそうにへらっと笑う余裕な表情に思わず笑いがこみ上げた。 俺の好きな人は、昔からこーいう人だった。 そして、今も変わらない。

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