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予備校→sideY

「日高くん、お昼ご飯一緒にどうかな?」 予備校の同じクラスの女の子たちが、3人くらいわさわさとやってくる。 「……ごめんね。今日は、家に人がいないから、お昼に犬の面倒をみなくちゃいけなくて」 俺は、荷物を抱えながら一旦家に戻る準備をいそいそとする。 「そっか。ざんねんー。日高くんって犬派なんだね。どんな犬?」 女の子たちは、会話を続けようとするが、俺には構う時間がない。 東流のところに、一刻も早く戻ってやりたい気持ちでいっぱいである。 「大きな黒いドーベルマンだよ。他の人に懐かないから、俺がエサをあげないといけなくてね。つぎの講義までにもどるから、すぐにいってくるね!」 偽物の笑顔をはりつけて、横に手を振るとダッシュで予備校を出る。 少しでも、早く帰ってやらなきゃな。 待ち遠しい時間が、少しでも長くなるように。 「おまえら、日高にあんまり深入りしない方がいいぞ」 女の子の1人に、一見スポーツマンぽいが優等生タイプの男子が声をかける。 「あー、僻んでるんでしょ?日高くんが超イケメンだからって。松坂じゃ、到底かなわないって」 キャッキャッと女子は楽しそうに笑いながら声を弾ませる。 「ちげーって、北高のやつに聞いたけど、あの超不良のハセガワと付き合ってるらしいぞ」 「まさかのモーホーネタとか!?また、変な噂信じてきちゃって。あーでも、あんだけ綺麗な顔をしてたら、あるあるじゃない?」 ひとりの女子は、興奮しだして、まさかーとか、ありえなーいとか、萌えるんだけどー、とかハシャギはじめる。 「不良かー、じゃあ脅されてるのかな。日高くん可哀想」 「とりあえず、アイツにからむと、東高とか出てくるって噂だから、あんまり近寄らないほうがいいぞ」 男の言葉に女子たちは頬を膨らます。 「えー、日高くんはあたし達の触れるアイドルなのに!」 「やっぱり、松坂ねたんでるんじゃないの?ホントに分不相応だわ」 女子たちにネチネチとやりこめられて、松坂はため息をついた。 「とりあえず、オマエら忠告はしたからな。ハセガワはマジでやばいからな!」 「松坂ー、大きなお世話サマー」

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