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後悔と焦燥

タララタララタラター♪ タララタラタラタラター♪ 何度もうるさいほど、ゴッドファザーの着信音がずっと流れ続けている。 拘束は解かれていたが、腕を動かすこともしんどくて伸ばしかけた手も届かなかった。 何度も鳴る着信音に、漸く体を起こして携帯を手にすると、時間は15時を回っていた。 昼には戻ってくると言っていたのに、康史は戻ってきていない。 携帯の康史からの着信表示を見て、俺の頭の中がぐるぐると不安に似た気持ちでいっぱいになっていく。 な、んだ。事故にでもあったとか? 嫌な予感ばかりが頭を占めてきて、慌てて受話ボタンをタップした。 「……もしもし…?」 掠れきった声は、まるで自分の声じゃないみたいにガラガラだった。 ざわついて音が不鮮明な受話器から、康史じゃない男の声がする。 頭がぼーっとしてて、それが何故なのか考えが及ばない。 が、男の言っている内容に、思わずガバッと俺はベッドから飛び起きた。 「テメェら、今、ドコだ?!!」 どんっとベッドから降りて、片手でクローゼットをひっぱりあけて、すぐに着れる服を引っつかむ。 体が自分のもんじゃないようにバキバキでダルかったが、電話の内容でそんなことは、さっぱりぶっとんだ。 「……ブチ殺す」 電話の内容は康史が拉致られて、強姦だか輪姦だかされているだ、と。 ガキの頃から大切に、誰よりずっと大切に守ってきたってのに。 自分さえ手に触れることもせずにただ、ただ、ずっと守ってきた。 なのに、何で、俺はいま、安穏と寝てたんだ。 事実より何より、俺自身が許せない。 「待ってろ」 場所は指定された小学校の名前から、こないだ西覇が連れ込まれた廃屋なのはすぐに分かった。 だったら待ち合わせより、先にそっちを襲撃すれば、いい。 奴らに逃げ道は、やらない。 切羽詰まったキモチで電話を切ると、身体を起こして康史のクローゼットからスカジャンを羽織って部屋を飛び出した。 早く、早く、いって康史を取り戻さなくてはというキモチしか今は思いつかない。 マンションの非常階段を駆け下りて、外に停めておいたバイクに跨り、メットをかぶるとエンジンをかける。 一番近い距離で、少しでも早く康史を取り戻す。 それしか頭になかった。 後ろから、スピード違反かなにかでパトが追いかけてきてる気がするが、フルスロットルでぶっちぎる。 今は、交通規則なんて守ってらんねえ。 くそ……なに、やってんだよ……俺ァ……。 焦燥ばかりが、俺の胸を突き抜けた。

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