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不安感→sideT

目を覚ますと、康史は横で起きていて、なんだか思い悩むようなずっと俺を見ていたようだ。 久しぶりっていうのもあるが、おあずけを食らっていたせいで、かなり乱れちまった気もする。 記憶をなくした康史にとって初めてのセックスだったんだから、ひくことはないだろうけど、きっとビックリしちまっただろうな。 あの日……理性すら飛ばしてしまった俺を、康史は抱いたみたいだったが、記憶がほとんどなくて、ちゃんと抱かれた充足感は、正月以来だったかもしれない。 それに、俺はなんとなく康史の記憶がないまま、セックスするっていうのも、なんか難しそうな気もしてて、どっかで諦めちまってたからかもしれない。 「悪ィ、ぶっとんだ…………」 大体、最近ぶっとんでばかりでホントに快感に弱くなってきている。 「気持ちよくて?」 じいっと顔を覗き込む康史は、どことなく不安そうな感じである。 なんだか、どっかでなにかを気にやんでいる感じがするのだが、俺にはまったく読み取れない。 なんだか心もとない感じで、どこか確認したいようなそんな口調である。 「まあな……、オマエに抱かれるといつも大体こんなんだよ、俺ァ」 思い返すと恥ずかしすぎるのだが、キモチがいいのは本当にとめようがない。 声もホテルだと思うと抑えがきかなくなる。 「……エロすぎ……、でもさー、そのちんこのピアスはやりすぎじゃない?」 くすくす笑いながら示唆されるが、それは俺がつけたわけではない。 「婚約記念だって、オマエがつけたんだよ。エンゲージチンピー」 「婚約……」 はとが豆鉄砲くらった顔をして、俺の顔をまじまじと見返す。 「だからよ、オマエが俺のオヤジに、息子さんをくださいって言ってくれた」 「えええええええ、あのオヤジさんに」 康史は一瞬目を瞠って驚きを隠せないらしく、うわうわーと声に出して驚いている。 「そう。すげえ感動したぜ。だから、俺は、オマエが就職したらオマエに嫁入りするからよ」 「嫁入り……」 なんとなく声が半信半疑なので、ちょっと俺も唇を尖らせる。覚えていないのはわかっているのだが、もう少し喜んでほしいものだ。 「イヤか?」 「……俺はトールをずっと好きだったんだから、イヤじゃねえって………」 「そっか、じゃあヨカッタ」 聞きたい答えを貰って満足した俺は、裸の体を康史の方に転がしてぐっと抱き寄せる。 「じゃ、帰るか」 「からだ、大丈夫なの?」 気遣うような康史の言葉に俺は康史の頭を撫でて立ち上がる。 「こんくらいなら、ヤクザの10人くらいは倒せる」 「そんなもん、倒すな。バカ」

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