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返り討ち→sideT
康史のことは誠士に任せているから大丈夫として、まあ、この数で報復なあ。
俺は今、教習所の駐輪場からの細い路地裏で、10人前後の東高のやつらに囲まれている。
見たことがない連中で、いつもくるメンツではないようだ。
「あ?ナニ?オマエらの制服みっと、いま腹立って仕方ねーんだけど。怪我する前に、そこどけよ」
教習所の時間は余裕をもってきたが、あんまり長引きたくなくてしっしと手を横に振る。
「金崎のこた知ったことじゃねーが、やられッぱなしはメンツにかかわんだよ」
赤い髪のわりと身長の高いヤツが、俺に殴りかかってきたので、とりあえず脚をかけて転がし、腹部を踏み付ける。
「タケちゃん!!よくも、ハセガワァ!!!」
子分らしい奴らが一斉にかかってきたが、いつものヤツらよりは動きがよく強そうだ。
軽くいなしながら、ひとりづつ地面に殴りつけて沈めていく。
タケちゃんとやらは、すぐに起きあがり俺に襲い掛かってくるので、回し蹴りを食らわせて壁にたたきつける。
こいつが一番いい動きだな。まあ、ボスなんだろうけど。
「多勢に無勢とか、卑怯なんじゃねーの?俺の大事な相棒を、ひでえ目にあわせたのによ」
抑えがきかなくなり、グシャグシャと男達を殴り倒していく。
やべえな。
そろそろ、止めないと。
理性はそういってくれるのだが、感情が追いつかない。
「ミヤ、逃げろ!ハセガワは俺が抑える」
タケちゃんは俺の胸元にタックルをくらわせて、その間に子分どもを逃がす作戦に出たようだ。
あー良かった、人殺しにはなりたくねーしな。
俺は感情の行き場を変えて、タケちゃんとやらを胸元から引き剥がして、急所にはならない腹部をゴツゴツと殴り始めた。
ふと気がつくと、路地からゆっくりと歩いてこちらに近づいてくる長身の人影かある。
加勢がきたか?それにしちゃあ、戦意や敵意はまったく感じない。
「誰だ?」
影は近寄ってきて、金髪と康史とは違う感じの男らしい美形が立っている。
目元はタレ目で、身長は俺より少し高くガタイもしっかりしている。戦意はないが、強さはかなり強いということがわかる。
「こんちわ。ウチノ子連れ帰りにきたんだわ」
この場にそぐわない、のほほんとした口調で俺に臆せずにいう。相当自信があるのか。
よく見ると、相手は東高の制服を着ている。
やる気なら、また返り討ちにするけどな。
「あー?コレ?」
ぶらぶらと吊る下げた意識がほとんどなさそうなタケちゃんとやらを見やる。
力づくで取り返すなら、やってみろ。と、思う。
「オマエ、東高?」
「そだよ」
軽く言葉を返す金髪には、まったく戦意も敵意もみえない。
俺をふわふわとした笑顔で見返して、まるで返してといえば返してくれるとこころから思っているようだ。
なんだ、こいつは。
「……俺、今すげえ、東高の奴等に怒ってるンだけど……」
簡単に返すわけにはいかないと告げると、金髪は男らしい顔を少し悲しそうにゆがめて、
「知ってる。えっと、ヤッちゃんにひでえことされたんでしょ」
康史のことを、ヤッちゃんと呼ぶのは、幼い時の知り合いと俺の家族だけだ。
こいつは、俺を知っている?
俺はこいつを知っている、のか。
金髪の綺麗な、光があたると少しだけ緑に光るビー玉のような目には、ひどく懐かしい気持ちになる。
「……オマエ、誰?」
むかし、康史と同じくらい綺麗で天使のような……顔も身体もごつくはなってて面影はまったくないけど。
きっと、そうだ。
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