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第28話 販売終了のお知らせ。 2

「……杉原先輩、先にお洋服見に行こうとしましたね?」 「どして?ダメ」 「当たり前です!!……先に着替えたら跡が見えてしまいます」 叶が首筋を抑えて上目使いで頬っぺたピンクにして俺を見上げた。 うわー…かなりクるんですけど、叶ちゃん……。 そういう無自覚な可愛い仕草とか、誰もいないところでしてくれないかな? でもね、わざとだよ……俺が駅ビルの服フロアにきたの。 叶の首筋に残るマーキングを少しでも誰かに見せたい、だからわざと服を先に着せようて思ったんだけど、丸潰れ。 「先輩、薬局が先ですっ」 「はぁい…」 仕方なく俺は駅ビルの中にある薬局に叶と向かった。 来た薬局は世間知らずの叶も口ずさむほどの有名なチェーン店薬局でーす。 地元のこの薬局で可愛い絆創膏を叶が見付けて俺の首筋と鎖骨に貼ったのを思い出した。 あんときに叶が『先輩を失ったら死にます』と俺に呪いをかけてくれた。 あんときの絆創膏があったら嬉しいな、と思ったけど見当たらなかった。 「あ、杉原先輩見てください!!この絆創膏も可愛いですっ」 叶が見付けたのは、やっぱし女の子子供向けの色の違う花柄絆創膏だった。 「よしよし、叶はこれがイイならセンパイが買ってあげよう!!」 「見付けただけで……私がこの絆創膏を貼りたいわけでは……」 「叶は可愛いから似合うと思うよ」 「……これにします…」 叶は可愛い。 俺が『叶は可愛い』というと照れちゃって逆らえないんだよね? 「ですがこの絆創膏は私が購入します」 頑な、でもまぁいいかな? ? ……叶がふと立ち止まった。 「叶どした?」 叶の視線の先には一枚の貼り紙。 その貼り紙には、『シャンプーの販売終了のお知らせ』と書かれてあった。 「…終了……なんですか」 叶の元気がなくなった。 そういえば叶からはよくリンゴのようなとてもイイ香りがしていた。 この販売終了のシャンプーはリンゴの香りのシャンプーだった。 叶の香りは……これだったのか。 「このシャンプー通販して購入していたのですが、何故かサイトから消えていたんです。終了だったんですね」 苦笑いだった。 「このシャンプー亡くなったお祖母ちゃんと一緒に使ってたんです」 「叶…」 「……リンゴのシャンプーでなくても髪は洗えますから大丈夫です。いつかは無くなる日がきますから」 俺は咄嗟に叶の手を握ってた。 握らないと、叶が迷子になりそうで……不安だった。 「杉原…先輩?」 「なくならないものもきっとある」 「……ないです、そんなもの」 叶が淋しそうに笑った。

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