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第37話 ワガママな『ハッピーエンド』。 4
そのDVDの主人は女、不動産会社の社員……いわばOL、上手くいかない仕事に口煩く怒鳴る上司。
毎日とぼとぼ帰る主人公に、叶のビー玉のような碧色の目が…潤んでいた。
こんな序章で泣いてたら……現実の世界に押し潰されちゃうよ?
黙って見ていることが出来なかった俺は叶の肩を『ちょん』とつついて、
「叶、おいで」
「……え?」
「俺の膝の上に乗って。一緒に見よ」
俺は叶の身体を持ち上げて、胡座をかいている足の上に乗せて……後ろから抱き締めるような状態でDVDを見始めた。
最初は俺に何かされるのかと警戒しているのか叶の身体は強張っていたけど、次第に身体の力が抜けた。
ある冬の日に…主人公はアパート前で一人の腹を空かせた青年を拾った。
爽やかそうで人懐こそうな青年に主人公はカップ麺をご馳走した。
「……杉原先輩、何故この主人公は部屋を片付けないで、コンビニのご飯かカップ麺で生活していたのでしょうか?」
叶は温室育ち、身の回りは執事やメイドがやってくれる『世界の大企業の『笹倉グループの御曹司』』で世間知らずだ。
「人生に疲れが出たり気力を失うと、何もしたくなくなる。この主人公は『仕事に疲れて生きていくことだけで精一杯』なんだよ」
せめて『生きていくための潤い』があれば。
恋愛DVDの展開じゃこの青年が『主人公の潤い』になる。
案の定、そうなった。
でも……青年は自分のことは主人公に下の名前だけ以外は一切教えなかった。
「先輩……私世間知らずですね」
「そうだね。でも、これから学べば良いよ」
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