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第10話 部活動強化週間。 7『表情の変化』
「…叶?」
「……」
「ひょっとして……怯えてる?」
「……ぇ…?」
鏡で杉原先輩を確認したら…表情がとても切ないものでした。
「…鏡に怯えてる?……俺に怯えてるの?」
私の表情の変化に気付いてくれていた先輩は、その私の変化した表情で先輩自身もこんなに表情が変わってしまっていたのに鏡越しで私は気付いてしまうなんて、今まで『杉原先輩』の何を私は見ていたのでしょうか。
「……私の最中の…表情が見ていられないんです」
嘘ではないです。
一番の理由ではないですが…、杉原先輩が私なんかの『表情一つ』でこんなにも落胆するのに気が付いてしまったから。
そして、それか何よりも嬉しかったのです。
そのくらい杉原先輩は私を想っていてくださっているのが分かったんです、嬉しくないはずがありません。
「スるの…やめておく?」
鏡越しの先輩は、無表情で…切なくなってしまいました。
……杉原先輩をこんな表情にさせることの出来るのは私だけでしょうか?
そう思うと…私は断りたくなくなってしまい、こちらの先輩も鏡越しの先輩も……受け入れたい気持ちになっていました。
「……ゃめなぃで…くださぃ…」
「!!」
「やめないでください…」
私は顔の近くにあった杉原先輩の首に軽くキスをしました。
……微かに残った鬱血の痕。
「……俺を止めれるチャンスは今だけだったのに。これ以上進んだら止められないよ?」
鏡越しの先輩は困ったように笑っていました。
……こちらの先輩の表情を確認したら、こちらの先輩と目が合いました。
……やはり困ったように笑っていました。
どちらも『大好き』な私の杉原先輩でした。
「……今の先輩がいいんです。やめないでください」
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