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第24話 キミと姫初めへの道程。 9 『初対面』

18時の最後の『茶の席』が始まる30分前に叶は迎えの車で帰っていった。 俺以外、紅葉さんの弟子も小雪さんの弟子も何故か指名されていなくて、一体どういう集まりなんだ…と思たら、何かどうやらどこぞの会社の偉い方々の集まりだったらしく、一応黙っていれば見た目だけは良い『清水』分家にしたのだろうと解釈させてもらった。 『茶の席』は順調に終わり下がろうとしたとき、一人の上品そうなイケメン爺さんに 「跡取りの青年に是非お手前を披露していただきたい」 「………」 うわぁ……なんかいやぁな予感しかしないんだけど。 「濃茶でお願いします」 俺……なんで修行中なのに正客に茶なんて点ててんの? 「流石にあの名家『清水』の跡取り。分家だけれど申し分ないですね」 「恐れ入ります」 正式な『茶の席』は解散になったんだから喋んのか……。 「茶碗も見事ですね、手入れもとても綺麗だ」 「恐れ入ります……」 「この青年と話がしてみたいのですが、二人きりにしてもらえませんか」 ……嫌な予感しかしないんだけど。 また……茶を点てて、この爺さん何者なんだよ。 「……うちの主菓子の味はどうだね?」 「……?」 主菓子……? 「君の作ってくれたケーキを孫と食べたよ。君は才能があるねぇ」 「………」 まさか……。 「久しぶりに会った孫は君の話ばかりしているよ杉原くん」 「…………」 やっぱし……。 「実に男前だ。叶は君みたいな『男』に憧れると思うよ、筋が通ってる」 「……………」 こんな早く来ちゃうかな……。 「叶は君に本当に『恋』をしているようだね」 「すみませんでした!!」 もう土下座しか出来ない!! この人叶の『笹倉グループ』の会長、笹倉 龍太郎だ。 俺……冷や汗ダラダラ。 「私は君を責めに来たんじゃない。だよ」 結局は俺を見に来たには変わらないじゃん!! 「祝福は出来ないが、君が叶をあんなに変えてくれたんだ。『男』としてはよ。」 「………」 「どうか叶を下さい」 「努力します…」 「今後は君の出る『茶の席』に時間が空いたら出来るだけ出席しますよ」 「有難う御座います」 「」 「俊さん、随分あの御爺さんに気に入られたみたいですね」 「………なんか俺が役やる『茶会』に出席したいみたいだよ……」 ちっとも嬉しくないけど……身が引き締まるかな。 ははっ………はははは…………はぁ……。 俺は正月に『初』を体験しすぎた気がする。 冬休み中に3kg痩せた。 ……というか窶れた。 完

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