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第8話

そうして、庄一とスイの不思議な日常が始まった。 スイは長年この山に住んでいるせいか、とても動植物の生態に詳しかった。まるで、曾祖父と山を歩いている時のような心地よさがあった。庄一にとって、それはとても心が躍り、そして、安心が出来る時間だった。 そのため、ほぼ毎日、庄一は山に入っていた。冬の季節のため、そろそろ入るのを止めようかと思っていたが、あまりに楽しく、甘美な時間が山の中にあって、どうしても止められなかった。 スイも庄一との時間を楽しんでいる様子だった。心を許してくれたのか、最初は隠していた耳と尻尾を出したまま過ごした。寒い時分なのに浴衣一枚の姿で、庄一は不安に思ったが、化けているだけで実際には毛皮があるから寒くないのだとスイは言っていた。それでも心配になり、襟巻きを買ってやると、スイは初めての暖かさに驚きつつとても嬉しそうにしていた。 楽しい時間は、山に雪が降るまで続いた。 さすがに雪が降っては、危なくて入れない。庄一は気持ちを沈ませながらも春になるのを待つことにした。 しかし、春になると同時に、両親の決めた婚礼式を行うことになり、藤乃との夫婦生活が始まることとなってしまった。

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