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第16話

※※※※※※  祖父の日記は、そこで終わっていた。 僕は信じがたく、読み終わってからもただ呆然と祖父の机に突っ伏していた。気持ちを落ち着けようと、すっかり冷め切ったコーヒーを飲み干す。空になったコップを机に置いた瞬間、カランと金属音がした。全ての引き金の『鍵』が、コップに当たったからだ。 祖父の日記通りなら、この鍵は山小屋の鍵なのか。 『スイ』を監禁するための。 日記の続きはないので、その後、二人の関係はどうなったのか分からない。しかし、祖父が死ぬ間際まで家に居たかったのは、病院が嫌だっただけではなく、もしかしたら、山小屋に行くためだったのか。 それなら、空白の50年間、ずっとスイは山小屋に居たのか。 ―――ならば、祖父が死んでから2年、山小屋はどうなっているのか? ゴクリと僕は生唾を飲み込み、いつの間にか冷や汗をかいていた。 居ても立っても居られず、日が暮れそうになることも忘れて、鍵と日記を持って裏山に入っていった。

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