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第19話
そこには、腰まで流れる金の髪を揺らし、真っ白な肌、大きな金の瞳を持つ整った少し甘めの顔に、狐を思わせる獣耳が頭に二つ、浴衣の後ろにはフサフサとした尻尾のようなものが生えた『青年』が立っていた。
日記で読んだ『スイ』を少し大人にしたような姿だった。
青年の腕の中には、一杯の白い小さな花が摘まれていた。
僕が動けずにいると、青年が鼻を鳴らし、不思議そうにしながら近づいてきた。
「…しょういちじゃないのに、どうしてしょういちの匂いがするの?」
大きな双眼が、僕の顔を覗き込む。
金の中にある黒目は縦に伸びており、人間ではあり得ない形をしている。
「しょういちに似てるね。何でだろう。ねえ、しょういちがどこにいるか知ってる?」
これは、誰だ。
「しょういちが来てくれないんだ。しょういちに見て欲しくて、いっぱい花を取ってきてるのに…」
青年の頭の上にある耳が、シュンと垂れ下がる。
あまりのことに、僕の手は震え、手から祖父の日記と鍵が小屋の中に落ちた。
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