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第2話

「うううう … 私は嫌だって言ったのに …… 」 「最後の方はお前だって楽しんでたじゃねえか」 「ガット殿 … 」  大理石の床に金箔で描かれた複雑な魔方陣の上、魔力を使い果たしてしおしおになったフィオレオがしくしくと泣いていた。魔法使い用の回復魔方陣によってみるみる内に魔力が戻ってくる。その横で、悪びれた風もなくあっけらかんと言ったガットに向けて、白髪の老人がハァと溜め息をついて、やや厳しめの声を上げた。 「魔法使いがこんなになるまで、回復魔法を使わせるのはどうかと思われますぞ。しかも、今回だけでなく、この町に来てから何度も何度も … 。フィオレオ殿の技術の拙さのせいもあるのでしょうが … 、それでも、せめて、回復薬を使うなどしてみてはどうかね?」 胸あたりまでたっぷりある白い髭がもごもごと動く。さすがにガットも「はあ … 分かりました」と一応生返事をしていた。  老人は、この町の魔法協会の長だ。二人がこの町に来て 1 週間、既に 3 回はフィオレオがガットの肩に担がれて協会に来ているのを見ている。しかし、それが、『勇者の回復に関係なくセックスをしていた為、魔法使いが魔力を使い果たしました』という事実だとは、さすがに考えも付いていないようだ。  この国では、勇者を中心に、魔法使い、策士、剣士がパーティーを組み、国の平和を守っている。その中で、魔法使いは唯一、仲間の回復を担う役割を持っていた。しかし、魔法使いであるフィオレオはレベルがすこぶる低かった。 20 歳だと大抵はレベル 20 が普通だが、フィオレオは 11 だ。潜在能力は平均的だが、技術が拙い。そのため、パーティーのガットを回復させるにも限度があった。  昨日みたいな血を伴う大きな切り傷などは、フィオレオの魔法だと回復させられない。そういう場合、売店で売られている回復薬を使うことが一般的には多いのだが、それ以外の方法も一つだけあった。 それが、『セックスをすること』だ。  魔法使いの精液には、回復の魔力が沢山詰まっている。 そのため、フィオレオとガットの場合、回復魔法で治らない時 ―― というよりも、どんな些細な怪我でもほぼ毎回、ガットの中にフィオレオが精液を注ぐことでガットを回復させていた。なぜなら、ガットが気持ちいいことが大好きだからだ。だが、回復に関係なくセックスして射精しても、魔法使いは魔力を使うことになる。そのため、フィオレオが 18 歳の時にガットとパーティーを組んでからずっと、どの町に行っても最低 2 回はセックスで魔力を使い果たし、魔法協会の世話になることが常であった。 「ああ、それとヴァイスから手紙が来ておりましたぞ。多分、最近あちらの町へ行く途中の山で、男達が消えるという物騒な話がありましてな。その指令かもしれませんな」  純白の封筒に金の繊細な紋様が描かれた手紙を、老人はガットに手渡した。勇者達を統括する協会――ヴァイス協会からの手紙だ。勇者達はヴァイス協会からの指令を受け、国中を周り、指令を達成することで報酬を得ていた。  暫くしてフィオレオの腕に付いている魔力や体力などを計る腕時計型の機械から回復完了の音が鳴ると、ガットとフィオレオはすぐに支度をして村を出た。

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